- SaaS営業は、契約を取って終わりではなく、顧客が使い続けるところまでが成果になる営業職です。
- 年収は職種や会社による幅が大きく、給与の内訳を読めるかで転職後の満足度が変わります。
- インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの違いと求人票の年収の読み方を解説します。
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株式会社CAREER FOCUS/東田尚起SaaS営業は「年収が高い」というイメージが先行しがちですが、実際は会社ごとに給与の設計がまったく違います。数字の見方を先に押さえておくと、求人選びで失敗しにくくなります。
SaaS営業の仕事内容


SaaS営業は、クラウド上で提供するソフトウェアを法人に提案し、契約から導入後の定着までを支える仕事です。多くの会社では工程を分業しており、職種ごとに求められるスキルも年収の幅も異なります。
営業が担う3つの職種
SaaS営業は、大きくインサイドセールス(IS)、フィールドセールス(FS)、カスタマーサクセス(CS)の3つに分かれます。会社によっては、ISをさらに新規開拓担当と既存顧客担当に分けたり、FSをエンタープライズ担当と中小企業担当に分けたりします。
それぞれの役割は次の表のとおりです。
| 職種 | 主な役割 | 主な接点 | おもな成果指標 |
|---|---|---|---|
| インサイドセールス | 見込み客への連絡と商談機会の創出 | 電話・メール・オンライン | 商談化数、アポイント数 |
| フィールドセールス | 課題の把握、提案、見積もり、契約 | オンライン・対面の商談 | 受注額、受注率 |
| カスタマーサクセス | 導入支援、活用促進、更新と拡張の提案 | 既存顧客との定期面談 | 継続率、解約率、追加契約 |
※職種名や分担の線引きは会社により異なります
表の3職種は前から順につながっており、前工程の質が後工程の成果に直結します。自分がどの工程を担当するのかを、応募前に必ず確認してください。
1日の業務の流れ
インサイドセールスの1日は、朝に前日のリード状況を確認し、午前から午後にかけて架電やメール、オンライン面談を行う形が一般的です。夕方には商談の内容を管理ツールに記録し、フィールドセールスへ引き継ぎます。
フィールドセールスは、商談の準備と実施、提案資料の作成、社内の関係部署との調整が中心です。カスタマーサクセスは、導入後の利用状況データを見ながら、定例会や活用提案の準備を進めます。
- 朝は管理ツールで案件の進捗とリードの状況を確認する
- 日中は商談や面談、提案資料の作成に時間を使う
- 夕方は活動内容と次回のアクションを記録して共有する
3つの業務に共通するのは、活動がすべて記録され、チームで共有される点です。個人の勘ではなく、記録されたデータを根拠に動くことがSaaS営業の特徴です。
一般的な法人営業との違い
従来の法人営業は、製品を納品した時点で売上が確定する「売り切り型」が中心でした。一方でSaaSは月額または年額の継続課金が前提のため、契約後に使われ続けて初めて収益が積み上がるモデルです。
そのため、新規契約の件数だけでなく、解約率や追加契約の金額まで評価に含まれることが多くなります。顧客が製品を使いこなせなければ解約につながるので、導入後の支援も営業活動の一部と考えられています。
同じ「SaaS営業」の求人でも、新規開拓だけを担当するのか、既存顧客の継続まで担当するのかで仕事内容は大きく変わります。面接では、前工程と後工程の担当者の人数と、引き継ぎの方法を質問すると実態が見えます。
SaaS営業の年収相場


SaaS営業の年収を単独で集計した公的統計は多くありません。そのため、全体の水準を示す公的統計と、職種別の傾向を示す転職支援会社の解説を、分けて読むことが大切です。
公的統計から見る年収の水準
国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査では、給与所得者の平均給与は478万円、正社員(正職員)は545万円、正社員以外は206万円でした。SaaS営業はこの区分でいう正社員にあたるため、まず545万円を比較の基準にすると位置づけがわかります。
ただし、この数字は全業種・全職種の平均です。SaaS営業の求人には500万円台から1,000万円を超えるものまで混在するため、平均との差よりも、自分が応募する求人の内訳が重要になります。
職種別の年収の傾向
マイナビ転職エージェントの解説では、インサイドセールスの年収はソフトウエアベンダーの平均(440万円)と同水準とされています。フィールドセールスは、その平均を上回る傾向があると説明されています。カスタマーサクセスは平均と同程度かやや高い傾向で、年収帯が一定でないとも指摘されています。
この傾向を整理すると、次のようになります。
- インサイドセールスは未経験者の入口になりやすく、年収は入社時点では平均的な水準になりやすい
- フィールドセールスは受注額に応じて評価が決まるため、成果次第で上振れしやすい
- カスタマーサクセスは新しい職種のため、会社ごとに年収の設計がばらつく
3つの職種に共通するのは、入口の年収よりも、その後に担当範囲を広げられるかで差がつく点です。
年収に差が出る要因
同じ職種でも年収が変わる要因は、主に4つあります。外資系か国内か、扱う顧客の規模、会社の成長段階、そして固定給とインセンティブの比率です。
外資系は成果主義の色が濃く、成果が出れば収入は大きく増える一方、成果が残せなければ下がります。国内企業は固定給の比率が比較的高く、収入の変動が小さい傾向があるとされています。年収の高さと安定性は、基本的に引き換えの関係にあります。
求人票の「想定年収」は、最も高い人の金額を示している場合があります。応募前に、入社1年目の人が実際に受け取った金額の目安を、エージェント経由で確認しておくと、入社後のずれを減らせます。



年収の数字は、母集団が違うものを1つの平均として比べると判断を誤ります。公的統計は基準として、求人票は個別の条件として、分けて見てください。
SaaS営業の年収を左右する給与の内訳


SaaS営業の求人でよく見るのが、OTE(On-Target Earnings)という表記です。OTEは「目標を達成したときに受け取れる年収の想定額」を意味します。OTEは最大額ではなく、達成率100%のときの金額ですが、実績の分布まで確認しないと実態はわかりません。
固定給とインセンティブの比率
OTEは、固定給とインセンティブ(変動給)の合計で構成されます。たとえば、固定6割・変動4割の会社と、固定8割・変動2割の会社では、同じOTEでも収入の安定度がまったく異なります。
変動の比率が高いほど、達成率が高い月や四半期の収入は増えます。反対に、新製品の発売直後や景気後退期のように受注が伸びない時期は、収入が大きく落ち込みます。
OTEの計算例
ここでは、OTEが700万円の2つの会社を、仮の条件で比較します。インセンティブは達成率に比例して支給されるという単純な前提で計算しました。
| 目標の達成率 | 固定6割・変動4割 | 固定8割・変動2割 |
|---|---|---|
| 60% | 588万円 | 644万円 |
| 80% | 644万円 | 672万円 |
| 100% | 700万円 | 700万円 |
| 120% | 756万円 | 728万円 |
※OTE700万円、変動分は達成率に比例して支給される仮定の計算例です。実際の制度は会社により異なります
達成率60%の年は、固定の比率が高い会社の方が56万円多くなります。一方、120%の年は、変動の比率が高い会社の方が28万円多く受け取れます。自分が毎年どの達成率に収まるかを見積もることが、会社選びの基準になります。
求人票で確認する項目
求人票のOTEを見るときは、金額だけで判断せず、算出の前提を確認します。確認が必要なのは、次の項目です。
- 固定給の月額と、固定残業代が含まれているかどうか
- インセンティブの算出方法(達成率に比例するか、段階式か)と上限の有無
- 評価の対象期間(四半期か年間か)と、退職時の支給ルール
- 直近の達成者の割合と、入社1年目の平均的な達成率
4項目のうち、達成者の割合は求人票に載らないことが多いため、面接や転職エージェントを通じて質問してください。この質問に具体的な数字で答えられる会社は、制度が整理されていると判断できます。
固定給の中に固定残業代が含まれている場合、基本給の実質額は想定より低くなります。月給の内訳と、何時間分の残業代が含まれているかを、必ず書面で確認してください。
SaaS営業がきついと言われる理由


SaaS営業がきついと言われる背景には、成果が数字で見えやすい構造があります。きつさの原因は仕事の量よりも、管理の仕組みと分業の構造にあるケースが多いです。
数字の管理
SaaS営業では、商談数、受注率、受注額、継続率といった指標が常に記録され、チームで共有されます。月次や四半期の目標に対する進捗が可視化されるため、未達の状態が隠れません。
インセンティブが目標達成率に連動する会社では、数字がそのまま収入に反映されます。この透明性を「公平」と感じる人もいれば、重圧と感じる人もいます。
分業の連鎖
前工程から後工程へ案件を引き継ぐ分業体制では、自分の成果が他の担当者の仕事の質に左右されます。ISが十分に課題を聞き取らないまま引き継いだ案件は、FSの商談でも成約しにくくなります。
反対に、自分が担当した工程の精度が低ければ、次の担当者に迷惑がかかります。連携の工数と責任の所在が、分業制特有の負担になります。
製品と市場の変化の速さ
SaaSは製品の機能追加や価格改定が頻繁に行われる業界です。競合製品も次々に登場するため、営業担当は新しい機能と他社との違いを、継続して学び続ける必要があります。
学び直しの量が多い点は負担になりますが、見方を変えると、他業界でも通用する知識が継続して身につくともいえます。
面接では、チームの目標達成率の分布と、未達の場合の面談や評価の方法を質問してください。数字を責める文化なのか、原因を一緒に分析する文化なのかは、この回答から読み取れます。



「きつい」の中身は人によってまったく違います。数字の管理が苦にならない人にとっては、評価基準が明確で働きやすい環境になります。自分がどちらのタイプかを先に整理しておきましょう。
SaaS営業に向いている人と向いていない人


SaaS営業への向き不向きは、経歴の長さよりも、仕事の進め方の傾向で決まります。数字で振り返れる人、相手の課題を聞ける人、学び続けられる人が成果を出しやすい職種です。
向いている人の特徴
向いているのは、指標を見て改善点を見つけ、次の行動に反映できる人です。商談がうまくいかなかったときに、感覚ではなく数字や記録から原因を探せる人は、ISでもFSでも成長が早くなります。
また、顧客との関係を長期で捉えられる人も向いています。契約後の活用支援まで含めて成果になるため、目の前の受注だけを追わない姿勢が評価されます。
向いていない人の特徴
向いていないのは、数字による評価に強い負担を感じる人や、安定した収入を優先したい人です。インセンティブの比率が高い会社では、月ごとの収入の変動が大きくなります。
また、目の前の契約を急ぐあまり、顧客の課題に合わない提案をしてしまう人も、解約につながりやすく評価が下がります。
| 観点 | 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|---|
| 数字との付き合い方 | 指標を改善の材料として使える | 数字を評価の圧力と感じやすい |
| 顧客との関係 | 長期の信頼を重視する | 目先の契約を優先しやすい |
| 収入の考え方 | 成果に応じた上振れを望む | 毎月の安定を最優先する |
| 学び方 | 新機能や市場の変化を追い続ける | 一度覚えた方法を変えたくない |
表の4つの観点のうち、2つ以上が左の列に当てはまるなら、SaaS営業との相性は高いと考えられます。
未経験者に求められる素養
未経験でも、法人向けの無形商材の営業や、IT関連の仕事の経験があれば、評価されやすくなります。顧客の課題を整理して提案する力は、SaaS営業でそのまま活かせます。
経験が少ない場合は、ISから入り、商談の流れと製品理解を身につけるのが一般的な道筋です。入社前に、使用する管理ツールや製品の基本を調べておくと、選考でも有利になります。
向き不向きは、職種ごとにも異なります。数字を追うのが得意ならFS、顧客と長く向き合うのが好きならCSというように、自分の強みと職種の役割を対応させて考えてください。
SaaS営業への転職方法とキャリアパス


SaaS営業への転職は、最初にどの職種から入るかと、どの会社を選ぶかで、その後の年収の伸び方が変わります。入口の職種と給与制度の確認が、転職の成否を分けます。
未経験からの入口
未経験者がSaaS営業に入る場合、最も多い入口はインサイドセールスです。商談の前工程を担当し、製品知識と営業の型を身につけながら、フィールドセールスやカスタマーサクセスへ進む道があります。
法人営業の経験がある場合は、フィールドセールスで直接採用されるケースもあります。その場合は、経験した商材の単価や、顧客の業種などを具体的に説明できるよう準備しておきます。
選考で見られるポイント
選考では、これまでの営業活動を数字で説明できるかが重視されます。たとえば、月の架電数や商談数、受注率、担当した顧客の数などを、前年との比較で示せると説得力が増します。
あわせて、応募先の製品と顧客の課題への理解も確認されます。公式サイトの導入事例や料金ページを読み込み、「どの業務課題を解決する製品か」を自分の言葉で話せるようにしておきます。
- 営業実績は件数・率・金額の3つで整理して話せるようにする
- 応募先の製品が解決する課題を、導入事例から具体的に説明できるようにする
- 応募先の給与の内訳と、評価の基準についての質問を事前に用意する
3つとも、単に準備をするだけでなく、面接官に「入社後の働き方を具体的に想像できている」と伝える材料になります。
転職後のキャリアパス
転職後は、同じ職種で経験を積んで評価を上げる方法と、別の職種へ移る方法があります。ISからFSへ、FSからCS やマネージャーへ進む例が一般的です。
さらに、事業企画やマーケティング、プロダクト関連の職種へ移る道もあります。顧客の声と数字を扱った経験は、他の職種でも通用する武器になります。
SaaS企業の給与制度や達成者の割合は、求人票だけでは見えません。転職エージェントに、過去の入社者の実績や制度変更の履歴を確認してもらうと、入社後のずれを減らせます。



SaaS営業は、最初の1社目の選び方でその後のキャリアが変わります。年収だけで選ばず、職種の役割と制度の透明性まで比べて決めてください。
SaaS営業の仕事内容と年収に関するよくある質問
ここでは、SaaS営業の仕事内容と年収について、特によく寄せられる3つの質問に回答します。
SaaS営業の年収は他の営業職より高いですか?
一概には言えません。職種や会社によって差が大きく、フィールドセールスで成果を上げた場合は高くなりやすい一方、インサイドセールスの入社時点では平均的な水準になりやすいとされています。年収の高さは、固定給とインセンティブの比率、会社の成長段階に左右されるため、職種名だけで比較しないでください。給与の内訳と達成者の割合まで確認すると、実態に近い比較ができます。
未経験でもSaaS営業に転職できますか?
転職できます。特にインサイドセールスは未経験者を募集する会社が多く、入口として選ばれています。法人向けの営業やIT関連の仕事の経験があれば、さらに評価されやすくなります。選考では、前職での実績を数字で説明できることと、応募先の製品への理解を示すことが重要です。入社後は、ISで経験を積み、FSやCSへ進むのが一般的な流れです。
インサイドセールスとフィールドセールスはどちらを選ぶべきですか?
経験の有無と、重視したい条件で選びます。営業が未経験ならISで製品知識と営業の型を学び、法人営業の経験があるならFSで直接受注に関わる選択肢もあります。収入の上振れを重視するならFS、顧客との長期の関係を重視するならCSを検討してください。いずれの場合も、応募先の評価制度と給与の内訳を確認した上で決めることが大切です。
面接で聞きたいことは、事前に5つ程度書き出しておきます。給与の内訳、達成者の割合、前工程と後工程の人数、評価の方法、直近の制度変更を挙げておくと、会社の実態が見えます。
まとめ
SaaS営業は、インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの3職種に分かれ、契約後の定着まで含めて成果になる営業職です。年収は、国税庁の統計で正社員の平均が545万円ですが、SaaS営業は職種や会社による差が大きく、平均値より給与の内訳が重要になります。
求人票では、OTEの金額だけでなく、固定給とインセンティブの比率、達成者の割合、評価の対象期間を確認してください。きつさの正体は、数字が可視化される構造と分業の連鎖にあり、自分の働き方との相性を見極めることが大切です。
未経験なら、インサイドセールスから入り、実績を積んで職種を広げる道があります。入口の職種と給与制度を確認した上で応募先を選ぶことが、後悔の少ない転職につながります。
出典・参考情報
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FOCUS AGENT:東田 尚起


株式会社リクルートにてHR領域に従事。
求人広告営業(indeed/リクナビnext)をメインに、転職エージェントとしても従事。
自ら立ち上げた就職系メディアの事業売却を経験し、転職支援と日系企業を中心に複数社のRPO業務も担う。









