社会保険労務士は人気の国家資格ですが、資格スクールや転職サイトでは「社会保険労務士はやめとけ」という声も見かけます。合格率6%台という難関を突破しても、独立開業や収入の面で理想とのギャップに直面する人がいるのが実情です。
この記事では、社会保険労務士が「やめとけ」と言われる具体的な理由を、合格率や年収データなどの一次情報とあわせて整理します。向いている人の特徴や、挑戦する場合に押さえておきたい対策もあわせて解説します。資格取得を検討している人はもちろん、すでに社労士として働いていて今後のキャリアに迷っている人にも参考になる内容です。
- 社労士試験の合格率は6%台で推移し、直近(第56回)は6.9%
- 合格後の登録には実務経験2年か事務指定講習の修了が必要
- 勤務社労士は年収600万円未満が過半数という調査結果がある
FOCUS AGENT:東田 尚起

株式会社リクルートにてHR領域に従事。
求人広告営業(indeed/リクナビnext)をメインに、転職エージェントとしても従事。
自ら立ち上げた就職系メディアの事業売却を経験し、転職支援と日系企業を中心に複数社のRPO業務も担う。
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社会保険労務士がやめとけと言われる理由
社会保険労務士が「やめとけ」と言われる背景には、合格の難しさと取得後の現実とのギャップがあります。難関資格だからこそ期待値が高くなり、合格後に直面する壁とのズレが大きく感じられやすい構造です。
ここでは、合格率の低さ、独立までの道のりの長さ、クラウド化による業務の変化、給与水準という4つの角度から理由を整理します。

合格率6%台という難関資格の現実
社会保険労務士試験は合格率6%台で推移する難関資格です。厚生労働省が公表した第56回試験(令和6年8月実施)の結果では、受験者数43,174人に対して合格者数は2,974人、合格率は6.9%でした。
過去の回を振り返っても、合格率は4%台から7%台の間で変動しており、安定して6%台に収まる年が多く見られます。働きながら800〜1,000時間規模の学習時間を確保する必要があり、受験自体のハードルが高いことが「やめとけ」という声につながっています。
| 回 | 合格率 |
|---|---|
| 第49回 | 6.8% |
| 第50回 | 6.3% |
| 第51回 | 6.6% |
| 第56回 | 6.9% |
このように年による変動はあるものの、おおむね6%台を中心に推移しており、宅建士や行政書士と比較しても難易度の高い部類に入ります。科目ごとに合格基準点が設けられている点も特徴で、総合得点が高くても一科目で基準点を下回ると不合格になる仕組みです。苦手科目を作らず、全科目を満遍なく仕上げる学習計画が求められます。
株式会社CAREER FOCUS/東田尚起合格率だけを見ると腰が引けますが、科目数が多く範囲が広いぶん、計画的に学習時間を積み上げれば十分に合格を狙える試験です。闇雲に怖がる必要はありません。
合格してもすぐに独立できるわけではない
社会保険労務士として業務を行うには、試験合格だけでは不十分です。社会保険労務士法第3条により、労働社会保険諸法令に関する事務への従事期間が通算2年以上あること、またはこれに代わる事務指定講習を修了することが名簿登録の要件とされています。
事務指定講習は全国社会保険労務士会連合会が厚生労働大臣の認定を受けて実施しており、通信指導課程とeラーニングを組み合わせた講習を修了すると、実務経験2年と同等とみなされます。つまり、合格しただけではまだ「社労士」として名乗って仕事を受けられる状態にはなっていません。
独立開業を目指す場合は、この実務経験に加えて、顧客を自分で獲得する営業力も欠かせません。資格を取れば仕事が自動的に舞い込むわけではなく、紹介やWeb集客など地道な営業活動が必要になる点が、合格後のギャップとして語られやすい理由です。
- 試験合格後も登録には実務経験2年、または事務指定講習の修了が必要
- 独立開業では顧客獲得のための営業活動が不可欠
- 勤務社労士を経て実務経験を積んでから独立するルートが一般的
このように、合格はゴールではなく出発点にすぎません。実務経験と営業力という二つのハードルを越えて初めて、独立という選択肢が現実的になります。
クラウド給与計算ソフトの普及による業務縮小の懸念
近年はfreee人事労務やSmartHR、マネーフォワード クラウド給与といったクラウド型の給与計算・労務管理サービスが企業に浸透し、社会保険労務士の独占業務である手続き代行(1号業務・2号業務)の一部が自動化される流れが進んでいます。
これらのサービスは、入退社手続きや給与計算、電子申請までをクラウド上で完結できるのが特徴です。従来は社労士に外注していた定型的な手続き業務を、企業の担当者自身がソフトを使って処理できるようになったことで、手続き代行だけに依存した業務モデルは縮小の懸念を抱えているといわれます。
一方で、全国社会保険労務士会連合会が実施した調査では、就業規則の作成・改定や制度設計といったコンサルティング業務の需要が高まっているという結果も出ています。ルーティン化しやすい手続き業務ほど自動化の影響を受けやすく、判断や助言を伴う相談業務は残りやすいという二極化が進んでいる状況です。



クラウドソフトは便利な反面、法改正への対応や例外的なケースの判断は専門家の目が必要です。手続きだけに頼らず、相談対応やコンサルティングの力を伸ばせるかが今後の分かれ目になります。
難易度に見合わないとされる給与水準
社会保険労務士は難関資格でありながら、給与水準が難易度に見合わないと感じる勤務社労士が一定数いることも「やめとけ」と言われる理由の一つです。
全国社会保険労務士会連合会が2024年度に実施した社労士実態調査では、勤務社労士の年収分布として、300万円未満が16.8%、300万円から600万円が38.0%、600万円から900万円が25.0%という結果が公表されています。合計すると、年収600万円未満の層が過半数を占める計算です。
難関試験を突破し、法改正へのキャッチアップを続けながら働く専門職としては、水準が物足りないと感じる人が出てくるのも無理はありません。給与や待遇は勤務先の規模や業務内容によって大きく変わるため、転職や独立によって状況を変えられる余地がある点も押さえておきたいところです。
転職や独立を検討する前に、現在の勤務先の給与テーブルや評価制度を確認しておくと、資格を活かした待遇改善の余地があるかを見極めやすくなります。
社会保険労務士の年収と将来性の実態
社会保険労務士の年収は、勤務か開業か、企業規模や顧問先数によって大きく変わるのが実態です。平均値だけを見ると実態を見誤りやすいため、分布や中央値もあわせて確認する必要があります。
ここでは、勤務社労士と開業社労士それぞれの年収データと、業務構成の変化から見える将来性を整理します。


勤務社労士の年収分布
全国社会保険労務士会連合会の2024年度社労士実態調査によると、勤務社労士の年収は300万円未満が16.8%、300万円から600万円が38.0%、600万円から900万円が25.0%という分布でした。
この数字から、年収600万円未満の勤務社労士が全体の過半数を占めていることがわかります。900万円を超える層も存在しますが、一部の高待遇なケースに限られるとみられ、平均像としては中堅企業の総務・人事職と近い水準にとどまる場合が多いといえます。
| 年収帯 | 割合(勤務社労士) |
|---|---|
| 300万円未満 | 16.8% |
| 300万円〜600万円 | 38.0% |
| 600万円〜900万円 | 25.0% |
出典は全国社会保険労務士会連合会が公表した2024年度社労士実態調査です。企業の人事労務部門に所属する社労士と、社労士事務所に勤務する社労士とでは待遇が異なる場合もあるため、求人票や面談で条件を具体的に確認することをおすすめします。
企業規模によっても傾向は異なります。大企業の人事労務部門では、他の管理部門職と同じ給与テーブルが適用されることが多く、資格手当が上乗せされるケースも見られます。一方、中小規模の社労士事務所では、担当する顧問先数や業務の幅に応じて給与が決まる場合が多く、経験年数に比例して段階的に上がっていく傾向があります。同じ資格を持っていても、所属先の給与体系によって見える景色はかなり違うという点は押さえておきたいところです。
開業社労士の売上は平均と中央値の差が大きい
開業社労士の年間売上については、同じ2024年度社労士実態調査で平均1,657.9万円、中央値550.0万円という結果が出ています。平均値が中央値の3倍近くになっている点が特徴です。
これは、顧問先を多く抱える一部の大規模事務所が平均値を押し上げているためで、中央値のほうが多くの開業社労士の実感に近い数字といえます。実際、500万円未満の事務所が36.5%を占めるというデータもあり、開業すれば誰もが高収入になるわけではないことがうかがえます。



開業社労士の収入は顧問先数に比例する傾向があります。中央値が550万円という数字は、開業初期からしばらくの間は地道な営業と実務の積み重ねが必要であることを物語っています。
顧問先数と売上の関係を見ると、顧問契約数が30社を超える事務所では売上の中央値が1,200万円前後まで上がるという指摘もあります。開業社労士全体の顧問先数の中央値は10社程度とされており、顧問先を着実に増やしていけるかどうかが、収入の規模を左右する大きな要因になっています。
クラウド化で変わる業務構成と需要の行方
全国社会保険労務士会連合会の調査では、コロナ禍前と比べて需要が「増えた・やや増えた」と回答した開業社労士の割合が、労働・社会保険に関する相談で71.5%、各種規程の作成・改定で66.2%にのぼりました。一方、手続き代行や手続きに関する相談は59.1%にとどまっています。
この結果は、クラウド給与計算ソフトの普及によって定型的な手続き業務の相対的な重要性が下がり、相談対応やコンサルティング業務の需要が伸びていることを示しています。手続き代行だけに依存した業務モデルから、相談・助言型の業務へと軸足を移せるかどうかが、今後の収入や将来性を左右する分かれ目になりそうです。
法改正は毎年のように行われており、就業規則の見直しや人事制度の設計といった高度な判断を伴う業務は、当面は専門家の関与が欠かせない領域として残ると見られています。また、働き方改革関連の法制度やハラスメント対策など、企業が自力で対応しきれない複雑なテーマが増えていることも、相談需要を押し上げている一因と考えられます。
助成金申請や就業規則整備など、得意分野を明確にしておくと、手続き代行の自動化が進んでも相談先として選ばれやすくなります。
社会保険労務士に向いていない人・向いている人の特徴
社会保険労務士としてのキャリアが合うかどうかは、性格や働き方への志向によって大きく左右されます。向いていない人の特徴と向いている人の特徴を具体的に見ていきましょう。


向いていない人の特徴
法改正のたびに知識をアップデートし続けることが前提の仕事です。覚えた知識がそのまま通用し続ける仕事を好む人にとっては、負担に感じやすい面があります。
- 法改正への継続的な学習を負担に感じる人
- 営業や集客といった対外的な活動を避けたい人
- 定型的な手続き業務だけをこなしたい人
- 顧客対応でのクレームやトラブル対応にストレスを感じやすい人
特に独立を目指す場合は、営業活動を避けて通ることはできません。人と接する機会を最小限にしたいという志向が強い人にとっては、ミスマッチが生じやすい分野といえます。
向いている人の特徴
一方で、人の相談に継続的に向き合える人や、地道な実務を積み上げる作業が苦にならない人には向いている資格です。
- 企業の労務トラブルや相談に向き合うことにやりがいを感じる人
- 法改正などの最新情報を学び続けることに抵抗がない人
- 事務処理や書類作成を正確にこなせる人
- 長期的な信頼関係を築く営業スタイルが合っている人
社会保険労務士の仕事は、企業の人事労務という経営の根幹に関わる領域を支える仕事です。地道な積み重ねが評価につながりやすく、専門性を磨くほど長く活躍できる資格でもあります。



向き不向きは性格だけでなく、今どんな環境で働いているかにも左右されます。今の職場で相談業務に触れる機会があるかどうかも、適性を見極める手がかりになります。
事務指定講習や勤務社労士としての実務経験を積む中で、自分がどの業務にやりがいを感じるかが明確になっていきます。迷ったらまず現場を経験してみることが近道です。
社会保険労務士に挑戦する場合の対策と代替キャリア
「やめとけ」と言われる理由を理解したうえでなお挑戦するなら、事前の準備次第で懸念点を大きく減らせることも知っておきたいポイントです。


実務経験を計画的に積む
前述のとおり、登録には実務経験2年か事務指定講習の修了が必要です。試験合格前から社労士事務所や企業の人事労務部門で働いておけば、合格後にそのまま実務経験としてカウントできる場合があります。
合格後に実務未経験の状態からスタートする場合は、事務指定講習を受講することで登録要件を満たせます。通信指導課程とeラーニングの組み合わせで学べるため、働きながらでも計画的に準備を進めやすい制度です。
専門分野を持ち差別化を図る
助成金申請や給与計算、就業規則の整備など、得意分野を一つ持っておくことが、クラウド化が進む環境での差別化につながります。
手続き代行だけに頼る業務モデルは自動化の影響を受けやすい一方、企業ごとの事情に合わせた制度設計や複雑な助成金の申請サポートは、専門知識と経験が必要とされる領域です。特定の業種や企業規模に強みを持つことで、価格競争に巻き込まれにくい立ち位置を築けます。
クラウドツールを使いこなすITスキルを磨く
クラウド給与計算ソフトを競合ではなく活用する側の視点で学んでおくと、企業への導入支援や運用相談といった新しい業務機会につながります。
freee人事労務やSmartHR、マネーフォワード クラウド給与といったサービスの操作や連携に詳しい社労士は、企業側から見ても心強い存在です。ITツールの知識は、今後の社労士に求められるスキルの一つになりつつあります。
勤務社労士や人事労務職という代替キャリアも検討する
独立開業だけがゴールではありません。企業の人事労務部門で働く、社労士資格を活かした人事コンサルタントとして働くなど、選択肢は複数あります。
- 社労士事務所に勤務し、実務経験と専門性を積み上げる
- 一般企業の人事労務部門で資格を活かして働く
- 人事コンサルティング会社で専門性を発揮する
- 将来的な独立を視野に入れつつ、まずは勤務で経験を積む
資格を取得したからといって、必ず独立しなければならないわけではありません。自分の志向や生活設計に合わせてキャリアを選べることも、この資格の強みの一つです。



資格を取ってすぐに結果を出そうと焦らず、まずは勤務先で実務経験と人脈を積む期間と割り切るのも一つの戦略です。焦りは判断を誤らせやすいので、長期的な視点を持つことをおすすめします。
転職エージェントに相談すると、社労士資格を活かせる求人の傾向や、実務経験を積みやすい職場の特徴を具体的に教えてもらえます。
社会保険労務士に関するよくある質問
社会保険労務士は本当にやめとけと言われるほど厳しい資格ですか
合格率6%台という難易度の高さ、登録に必要な実務経験、クラウド化による手続き業務の変化、給与水準への不満といった要因が重なって「やめとけ」と言われやすくなっています。ただし、相談・コンサルティング業務の需要は伸びており、専門性を磨けば長く活躍できる資格でもあります。厳しさと可能性の両方を正しく理解したうえで、自分の適性や目指す働き方と照らし合わせて判断することが大切です。周囲の意見だけで決めず、実際のデータに触れてから結論を出すことをおすすめします。
社会保険労務士に独学で合格するのは難しいですか
独学で合格する人もいますが、出題範囲が労働基準法から年金制度まで幅広く、法改正への対応も必要なため、計画的な学習が欠かせません。働きながら合格を目指す場合は、800〜1,000時間規模の学習時間を確保できるかが一つの目安になります。通信講座や予備校を活用し、効率よく学習範囲をカバーする人も多く見られます。独学の場合は、最新の法改正情報を自分で追い続ける手間がかかる点にも注意が必要です。
社会保険労務士は今後なくなる仕事ですか
クラウド給与計算ソフトの普及で定型的な手続き代行業務は縮小傾向にありますが、就業規則の整備や制度設計、法改正対応といった判断を伴う相談業務の需要は増えているという調査結果があります。資格そのものがなくなるというより、求められる役割が手続き代行から相談・コンサルティングへと移っていく変化が進んでいると考えられます。今後は、ITツールを使いこなしながら高度な相談業務を担える社労士ほど、安定した需要を見込みやすくなりそうです。
社会保険労務士の資格だけで転職は有利になりますか
資格単体でも一定の評価を得られますが、実務経験や得意分野の有無によって転職市場での評価は変わります。人事労務の実務経験と組み合わせることで、企業の人事部門や社労士事務所からの評価が高まりやすくなります。資格取得後にどう実務経験を積むかが、転職市場での評価を左右するポイントです。未経験から目指す場合は、まず人事労務に関わる職種に就いてから資格取得を目指すルートも現実的な選択肢になります。
社会保険労務士の仕事は女性でも長く続けやすいですか
全国社会保険労務士会連合会の調査では、社労士全体に占める女性の割合は35.1%とされています。在宅での相談対応や書類作成など、働く場所や時間の融通が利きやすい業務も多く、出産や育児などのライフイベントと両立しながら働き続けている社労士も少なくありません。勤務形態や雇用先によって柔軟さは異なるため、働き方の希望は転職時にあらかじめ伝えておくと安心です。
合格率や年収の数字は年によって変動します。出願前に最新の公式発表を確認しておくと、学習計画やキャリア設計がぶれにくくなります。
最後に、社会保険労務士としてのキャリアを検討する際に役立つ転職エージェントを紹介します。
まとめ
社会保険労務士が「やめとけ」と言われる背景には、合格率6%台という難易度の高さ、合格後も実務経験が求められる現実、クラウド給与計算ソフトの普及による手続き業務の縮小という課題、難易度に見合わないとされる給与水準という4つの理由があります。いずれもデータの裏付けがある指摘であり、根拠のない噂ではありません。
一方で、相談対応やコンサルティング業務の需要は伸びており、専門分野を持ち実務経験を積み重ねることで、長く活躍できる資格であることも事実です。頭ごなしに否定するのではなく、自分の志向や働き方に合うかどうかを具体的なデータをもとに見極めることが、後悔しないキャリア選択につながります。
勤務先による給与差や働き方の選択肢が大きい資格だからこそ、転職エージェントを活用して情報を集めながら判断することをおすすめします。合格率や年収の数字は年度によって変わるため、出願前には必ず最新の公式発表も確認しておきましょう。
出典・参考情報
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FOCUS AGENT:東田 尚起


株式会社リクルートにてHR領域に従事。
求人広告営業(indeed/リクナビnext)をメインに、転職エージェントとしても従事。
自ら立ち上げた就職系メディアの事業売却を経験し、転職支援と日系企業を中心に複数社のRPO業務も担う。









