商社営業がきつい理由は?総合商社と専門商社の年収や働き方の違いも解説

商社営業がきついと言われる最大の理由は、労働時間の長さではありません。1件の取引で背負う範囲が、他の営業職より明らかに広いことにあります。

商社は売り手と買い手をつなぐだけの仲介役ではなく、自ら仕入れて自ら売る売買の当事者です。価格の変動、代金の回収、在庫、物流、為替の動きまでが担当者の案件に乗ってきます。さらに近年はトレードと事業投資を「車の両輪」とする収益構造へ移っており、営業に求められる領域が広がり続けています(日本貿易会 商社のビジネスモデルと社会的役割)。

そしてもう1つ重要なのが、商社営業はひとくくりにできないという点です。総合商社と専門商社では年収の水準も勤務地の範囲も別物で、同じ「きつい」という言葉の中身がまったく違います。この記事では公的統計と公開データだけを使い、両者を分けて整理します。

解説者

FOCUS AGENT:東田 尚起

FOCUS AGENT なおき

株式会社リクルートにてHR領域に従事。
求人広告営業(indeed/リクナビnext)をメインに、転職エージェントとしても従事。

自ら立ち上げた就職系メディアの事業売却を経験し、転職支援と日系企業を中心に複数社のRPO業務も担う。

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株式会社CAREER FOCUS/東田尚起

「商社はきつい」という話は、たいてい5大総合商社の話か、中堅専門商社の話のどちらかに寄っています。自分が受けようとしているのがどちらなのかを先に決めると、集める情報の精度が一気に上がりますよ。

目次

商社営業がきついと言われる理由

商社営業がきついと言われる4つの理由

商社営業のきつさは、取引を背負う範囲の広さ、勤務地の広がり、事業投資へのシフト、そして辞めにくさという4つの構造から生まれます。順に見ていきます。

売買の当事者として背負う範囲

商社の収益の源泉は、伝統的なモノの売買であるトレードです。顧客の代わりに売り先と買い先を探し出し、つなぐことで対価を得ます(日本貿易会 商社のビジネスモデルと社会的役割)。

ここで見落とされがちなのが、商社は紹介料をもらう仲介者ではなく、自ら買って自ら売る売買の主体だという点です。仕入れ値と販売値の差が利益になる以上、価格が動けば利益が消えます。

そのため担当者は、売る相手を探す仕事と並行して、代金を回収できるかどうかの見極め、在庫を抱える期間の管理、納期に間に合う物流の手配まで面倒を見ることになります。

売って終わりではなく、入金が確認できて初めて案件が閉じます。この「閉じるまでの距離の長さ」が、他の営業職から移ってきた人がまず戸惑うところです。

勤務地と時差の前提が広い

日本貿易会の集計では、伊藤忠商事、住友商事、双日、豊田通商、丸紅、三井物産、三菱商事の7社が拠点を置く都市は海外213都市、国内26都市にのぼります(日本貿易会 商社の強み)。

拠点が世界中にあるということは、担当する商流も世界中に散らばるということです。相手国の営業時間に合わせた連絡が日常的に発生し、勤務時間が前後に伸びやすくなります。

出張と転勤の範囲も国内営業とは比べものになりません。住む場所を自分で決めたい人にとっては、年収以前にここが最大の壁になります。

  • 相手国の時間に合わせた早朝や深夜の連絡が入りやすい
  • 現地での立ち会いや交渉のために出張の頻度が上がる
  • 海外駐在や国内転勤で数年ごとに生活の拠点が変わる

この3つに共通するのは、努力では動かせない条件だということです。本人の頑張りで吸収できる部分が小さいぶん、合わない人には長く効いてきます。

トレードから事業投資へ広がる仕事

近年の商社は、モノの売買に加えて投資活動の比重が大きくなっています。投資先の経営に深く関与し、比較的長期にわたる戦略的な投資を行うのが特徴とされます(日本貿易会 商社のビジネスモデルと社会的役割)。

その結果が数字にも表れています。7社の連結決算対象会社は内外約5,400社、連結の従業員は47万人にのぼる一方、単体の従業員数は3万人にとどまります(日本貿易会 商社の強み、各社有価証券報告書総覧2023年から集計)。

3万人が47万人の事業を動かす構図です。1人あたりが見る範囲が広く、売買の交渉だけでなく投資先の管理や再建の話が同じ担当者に降ってくることが起こります。

営業として入ったのに気づけば経営会議の資料を作っている、という声が出てくるのはこの構造が理由です。仕事の幅が広いことは成長機会でもありますが、時間の奪われ方は確実に激しくなります。

離職率の低さが生む抜けにくさ

商社が分類される卸売業について、厚生労働省の雇用動向調査を見ると意外な数字が出てきます。令和6年の一般労働者の離職率は「卸売業,小売業」で10.7%、産業計の11.5%より低い水準です(厚生労働省 令和6年雇用動向調査 産業別の入職と離職)。

平均勤続年数も長めです。賃金構造基本統計調査では「卸売業,小売業」の平均勤続年数は14.5年、平均年齢は44.3歳となっています(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査 産業別にみた賃金)。

きついと言われながら人が抜けていかないのは、待遇が良いことに加えて、取引関係が担当者に強く紐づいているためだと考えられます。自分が抜けると商流が止まるという感覚は、責任感であると同時に重しにもなります。

離職率が低い職場は、外から見ると恵まれた職場です。ただし中にいる人にとっては、逃げ道が用意されていない職場でもあります。

ワンポイントアドバイス
きつさの出どころを3つに分ける

商社営業のきつさは、取引の実務量、勤務地の条件、評価の仕組みの3つに分けて考えると整理できます。実務量なら部門異動で軽くなることがありますが、勤務地の条件は会社を変えないと動きません。

商社営業の年収の相場

商社営業の年収の相場

商社営業の年収は「高い」で片づけられがちですが、総合商社と専門商社では水準が大きく異なります。ここでは集計の対象範囲を明示しながら、3つの角度から整理します。

総合商社と専門商社の業種平均

転職サービスdodaの平均年収ランキング2025では、業種分類別の平均年収は総合商社が479万円で3位、専門商社が444万円で6位でした。同じ集計での正社員全体の平均年収は429万円です(トレオンメディア 商社の平均年収ランキング、パーソルキャリア 平均年収ランキング2025)。

この数字は各業種に属する企業の全社員を対象とした集計で、営業職に限った金額ではありません。それでも総合商社と専門商社で35万円の差がある点は、業態の違いがそのまま待遇に効いていることを示しています。

年代別に見ると差の広がり方がはっきりします。同じランキングの年代別平均年収を並べたのが次の表です。

年代総合商社専門商社全体
20代385万円381万円365万円
30代496万円466万円454万円
40代566万円545万円517万円
50代以上885万円634万円601万円

出典 トレオンメディア 商社の平均年収ランキング(dodaの平均年収ランキング2025をもとにした集計、対象は各業種の在籍者全体)

20代の時点では総合商社と専門商社の差は4万円しかありません。ところが50代以上では251万円まで開きます。商社の年収は入口ではなく、その後の伸び方で差がつくという構造がここに出ています。

上場企業の有価証券報告書で見る水準

業種平均は中小企業を含む数字です。大手に絞ると景色が変わります。各社の有価証券報告書をもとにした集計では、上場している商社の平均年収は次のようになっています。

企業名業態平均年収
三菱商事総合商社2,112万円
三井物産総合商社2,059万円
伊藤忠商事総合商社1,991万円
住友商事総合商社1,840万円
丸紅総合商社1,784万円
豊田通商総合商社1,421万円
双日総合商社1,257万円
兼松総合商社1,202万円
長瀬産業専門商社1,190万円
岩谷産業専門商社1,021万円
阪和興業専門商社998万円
ユアサ商事専門商社839万円
豊島専門商社661万円

出典 トレオンメディア 商社の平均年収ランキング(各社有価証券報告書などをもとにした集計)

ここで注意したいのは、これらはいずれも各社の全社平均であって、商社営業という職種の平均ではないということです。管理部門や役員層を含んだ数字であり、1社の金額を職種全体の相場として読むことはできません。

それでも読み取れることはあります。総合商社の上位5社が1,700万円を超える一方、専門商社は600万円台から1,100万円台まで幅広く分布しています。同じ「商社」でも、扱う商材と業態で水準がまったく違うということです。

公的統計で見る卸売業の賃金

商社は日本標準産業分類では卸売業に含まれます。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では卸売業と小売業が1つの区分として公表されており、令和7年の所定内給与額は男女計で月34.9万円でした(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査 産業別にみた賃金)。

産業計の34.1万円をわずかに上回る水準です。男性は38.8万円、女性は28.2万円となっています。小売業を含んだ区分である点は割り引いて読む必要がありますが、商社という業界の土台の部分を示す数字ではあります。

年齢階級別に並べると、昇給の形が見えてきます。

年齢階級所定内給与額(男女計)
20〜24歳24.1万円
25〜29歳27.3万円
30〜34歳30.2万円
35〜39歳33.7万円
40〜44歳36.2万円
45〜49歳38.5万円
50〜54歳41.8万円
55〜59歳42.3万円

出典 厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査(「卸売業,小売業」の所定内給与額、令和7年)

参考までに、給与所得者全体の平均給与は478万円、正社員に限ると545万円です(国税庁 令和6年分民間給与実態統計調査)。商社の中堅以上の企業は、この水準をはっきり上回る位置にいます。

ワンポイントアドバイス
求人票の金額と在籍者の金額を混ぜない

商社の年収情報は、求人票ベースの提示額、業種平均、有価証券報告書の全社平均が混在しています。比較するときは必ず同じ種類の数字どうしで並べ、面接では自分の等級で何年後にいくらになるのかを聞くのが確実です。

株式会社CAREER FOCUS/東田尚起

上位数社の2,000万円台という数字だけを見て「商社は稼げる」と判断するのは危険です。あれは全社平均で、かつ業界のごく一部の会社の話ですからね。

商社営業の仕事内容と1日の流れ

商社営業の仕事内容

商社営業の仕事は、売る相手を探すことだけでは終わりません。仕入れ側の交渉、販売側の商談、そして取引を成立させる実務の3つが同時に走ります。

仕入れ先の開拓と販売先への提案

商社が取り扱う商品やサービスは多種多様で、機械や輸送機、エネルギーや金属、化学品、繊維、食料、医薬品、情報通信まで広がっています(日本貿易会 商社の強み)。

営業はこの商流の両端に立ちます。川上では供給元を探して価格と数量と品質を詰め、川下では需要を掘り起こして納期と条件を詰めます。

片側だけを担当する仕事ではありません。買える見込みがないのに売る約束はできず、売れる見込みがないのに仕入れる約束もできません。両側の話を同時に進める必要があります。

この「両側を同時に動かす」感覚が、自社製品を売るメーカー営業との一番の違いになります。

取引を成立させる実務

商談がまとまってからが商社営業の本番だという言い方があります。契約書の作成、支払い条件の設定、海外取引なら信用状の手配、通関や船積みの調整、為替の予約まで、取引を成立させるための工程が続きます。

これらを専門部署が持つ会社もありますが、担当営業が窓口として全体を回すのが一般的です。事務作業が嫌いな人にはここがこたえます。

  • 契約条件と支払い条件の詰め
  • 取引先の与信枠の確認と更新
  • 船積みや納期に関する社内外の調整
  • 入金の確認と滞留した債権の対応

並べてみると分かるのは、どれも売上を直接作る作業ではないという点です。それでも1つ抜けると取引が止まるため、優先度を落とせません。

1日の流れの典型例

海外の商材を扱う担当者の場合、1日は時差から始まります。朝一番で前夜に届いた海外拠点や取引先からの連絡を確認し、急ぎの案件を切り分けます。

日中は国内の販売先との商談や社内の稟議対応に充てられます。見積もりの作成、与信枠の相談、物流部門との納期調整といった調整業務がここに入ります。

夕方以降は、相手国が動き出す時間帯です。価格交渉や条件の確認が終業後にずれ込むのは、商社営業では珍しくありません。

国内向けの専門商社であればこの時差の負担はほとんどなく、既存取引先を回るルート営業に近い日程になります。ここでも総合商社と専門商社の差ははっきり出ます。

ワンポイントアドバイス
入社前に商流のどこを担当するか確認する

同じ商社でも、輸入中心の部署と国内流通中心の部署では1日の形がまるで違います。面接では扱う商材だけでなく、取引の相手がどこの国にいるのか、時差のある連絡がどの程度発生するのかまで聞いておくと入社後のずれが減ります。

商社営業と他の営業手法の違い

商社営業と他の営業手法の違い

商社営業の特徴は、他の営業職と並べると輪郭がはっきりします。自社商品を持たないこと、取引の当事者になること、海外が業務に組み込まれていることの3点です。

メーカー営業との違い

メーカー営業は自社が作った製品を売ります。商材は固定で、強みも弱みも決まっています。一方で商社営業は仕入れる商材そのものを選べる立場にあります。

顧客の要望に合わせて供給元を差し替えられるのは商社の強みです。ただし裏返すと、自社製品という後ろ盾がないぶん、価格と納期と情報量で勝負するしかありません。

メーカー側の営業がどういう構造で大変なのかは、メーカー営業がきつい理由をまとめた記事で詳しく整理しています。

ルート営業や銀行の法人営業との違い

既存の取引先を定期的に訪問する点では、専門商社の営業はルート営業に近い性格を持ちます。ただし在庫と与信を自社で抱える点が決定的に違います。

銀行の法人営業も企業を相手にする点では共通しますが、扱うのはお金であり、モノの移動は発生しません。商社営業は物流と通関という物理的な工程が必ずついてきます。

それぞれの職種固有のきつさは、ルート営業がきつい理由の解説と銀行の法人営業がきつい理由の解説にまとめています。重なる部分はそちらを参照してください。

営業手法ごとの比較

主な営業職と商社営業を、立場、商材、利益の出方、海外との関わりで並べると次のようになります。

項目商社営業メーカー営業ルート営業銀行の法人営業
立場売買の当事者製造元販売代理資金の出し手
商材他社の商材を選ぶ自社製品に固定自社取扱品に固定融資と金融商品
利益の出方仕入れと販売の差製造原価との差販売手数料や差益利息と手数料
在庫と回収自社で抱える自社で抱える抱えない場合が多い抱えない
海外との関わり取引に組み込まれる部署により異なる少ない少ない
勤務地の範囲国内外に広い拠点による担当エリア内支店による

表にすると、商社営業だけが売買の当事者でありながら商材を選べるという位置にいることが分かります。自由度が高いぶん、抱える変数の数も多くなります。

どの営業がきついかを比べたい場合は、業界ごとの傾向をまとめた記事も参考になります。

営業がきつい業界ランキングの記事では、商材や商談の型ごとの負荷の違いを整理しています。

ワンポイントアドバイス
比較は年収より変数の数で行う

営業職を比べるときは年収から入りがちですが、続けられるかどうかを決めるのは自分が同時に管理する変数の数です。商社営業は価格と与信と物流と為替が同時に動くため、ひとつずつ片づけたい人には向きません。

株式会社CAREER FOCUS/東田尚起

「商社は激務」という一般論より、「自分は同時に4つ5つの変数を追うのが得意か」という問いのほうが、判断には役立ちます。

商社営業に向いている人と向いていない人

商社営業に向いている人と向いていない人

商社営業の適性は、語学力やコミュニケーション能力よりも、調整の多さと勤務地の条件を受け入れられるかどうかで決まります。

向いている人の特徴

向いているのは、立場の違う相手の都合を束ねて1つの取引にまとめるのが苦にならない人です。供給元、販売先、物流、社内の審査部門と、登場人物が多いほど力を発揮します。

数字を追いながら細かい実務を並行できることも条件になります。契約書の条項を確認しながら翌月の仕入れ計画を考える、といった頭の切り替えが日常的に必要です。

市況や為替が動いて計画が崩れたときに、面白いと感じられるかどうかも分かれ目です。予定どおり進むことのほうが少ない仕事だからです。

向いていない人の特徴

生活の拠点を固定したい人には厳しい仕事です。総合商社では海外駐在と国内転勤が前提に組み込まれており、本人の希望だけでは動かせません。

書類仕事を避けたい人にも向きません。契約、与信、通関、決済と、売上に直結しない事務が常に一定量あります。

1つの商材を深く掘り下げたい人は、専門商社のほうが合う可能性があります。総合商社では数年ごとに扱う分野が変わることが珍しくありません。

  • 転勤や海外駐在を避けたい
  • 細かい書類の確認作業が苦手
  • 扱う商材を自分で決めて深めたい
  • 業務時間を自分でコントロールしたい

この4つのうち2つ以上が当てはまる場合は、総合商社ではなく国内中心の専門商社を先に見るほうが現実的です。

判断に使う3つの軸

入社後に自分では変えにくい条件は3つあります。勤務地の範囲、扱う商材の広さ、与信と実務の量です。

軸総合商社専門商社
勤務地の範囲海外駐在と国内転勤が前提国内中心の会社が多い
扱う商材配属により大きく変わる特定分野に絞られる
与信と実務案件規模が大きく重い取引先が固定で読みやすい
年収の伸び方年代が上がるほど加速緩やかに上がる

年収の伸び方の違いは前述のとおりで、50代以上では総合商社885万円に対して専門商社634万円という差になります(トレオンメディア 商社の平均年収ランキング)。勤務地の自由と年収の伸びは、おおむね交換関係にあると考えると選びやすくなります。

どちらが優れているという話ではありません。自分が手放せない条件から逆算するほうが、入社後のずれは小さくなります。

ワンポイントアドバイス
譲れない条件を先に3つ書き出す

商社は会社ごとの違いが大きいため、求人を見る前に勤務地、商材、労働時間のうち何を優先するかを紙に書き出しておくと迷いません。条件を決めずに求人を眺めると、年収の高さだけで判断してしまいがちです。

商社営業がきついと感じたときの対処法

商社営業がきついと感じたときの対処法

きついと感じたときにすぐ辞める判断をすると、次の職場で同じ壁に当たることがあります。原因がどこにあるのかを切り分けてから動くのが確実です。

きつさの原因を分解する

まず、いま感じている負荷が実務量なのか、勤務地の条件なのか、評価の仕組みなのかを分けます。どれが重いかによって打てる手がまったく違うためです。

実務量が原因であれば、担当案件の数や商材の種類を減らす交渉が有効です。勤務地や時差が原因の場合は、部署が変わらないかぎり解消しません。

評価の仕組みが合わないのであれば、上長が変わるだけで改善することもあります。まずは1か月分の業務を書き出して、時間がどこに吸われているかを可視化するのが出発点です。

社内で持ち場を変える

商社は取り扱う分野が広いぶん、社内での移動先が多い業界でもあります。扱う商材の部門を変える、海外案件から国内案件へ移る、営業から審査や物流といった管理部門へ移るといった選択肢があります。

離職率が「卸売業,小売業」の一般労働者で10.7%と産業計より低い点も、社内での配置転換が機能していることの表れと考えられます(厚生労働省 令和6年雇用動向調査 産業別の入職と離職)。

社内で動けるなら、これまでに築いた取引先との関係や社内の信用を持ち越せます。転職より回復が早い選択肢として、先に検討する価値があります。

総合商社と専門商社の違いを踏まえて動く

転職を考える場合、同じ商社業界の中で業態を変えるだけで条件が大きく変わることがあります。総合商社から国内中心の専門商社へ移ると、勤務地と時差の負担は軽くなります。

ただし年収は下がる可能性が高くなります。業種平均では総合商社479万円に対して専門商社444万円、50代以上では885万円と634万円の差があります(トレオンメディア 商社の平均年収ランキング、パーソルキャリア 平均年収ランキング2025)。何を軽くする代わりに何を手放すのかを先に決めることが重要です。

年代によって選べる選択肢の幅も変わります。30代での動き方は30代向けの転職エージェント解説が参考になります。

商社の外に出る場合も、次の項で触れるとおり経験の持ち出し方を整理してから動くほうが条件は良くなります。

ワンポイントアドバイス
辞める前に1か月分の業務を書き出す

どの作業に何時間使っているかを書き出すと、きつさの原因が実務量なのか人間関係なのかがはっきりします。この記録は職務経歴書を書くときの材料にもなるため、退職を決める前でも無駄になりません。

株式会社CAREER FOCUS/東田尚起

商社営業の方から相談を受けると、原因が「会社」ではなく「配属された商材と地域」だったというケースがかなりあります。異動の可能性を確認せずに辞めるのはもったいないですよ。

商社営業の経験が活きる転職先

商社営業の経験が活きる転職先

商社営業の強みは、売る力そのものよりも、商流を設計して動かした経験にあります。この視点で転職先を選ぶと選択肢が広がります。

メーカーの海外営業と事業企画

メーカーにとって商社出身者は、自社製品をどう流せば売れるのかを外側から見てきた人材です。代理店網の構築、輸出入の実務、現地パートナーとの交渉といった業務にそのまま移せます。

貿易実務の経験は特に評価されやすい部分です。信用状や通関の手続きを実際に回した経験がある人材は、社内で育てるのに時間がかかるためです。

未経験分野への転換を考える場合の進め方は、未経験転職向けのエージェント解説にまとめています。

事業開発と投資の仕事

投資先の経営に関与した経験があれば、事業会社の事業開発や投資部門が視野に入ります。7社の連結決算対象会社が内外約5,400社にのぼることからも、商社が事業を持つ会社であることが分かります(日本貿易会 商社の強み)。

出資の検討、提携先の選定、投資先の業績管理といった業務は、商社の中で経験した人が少なくありません。これを職務経歴書に書き出せるかどうかで、応募できる求人の幅が変わります。

担当した取引の金額や国だけを書くのではなく、どの工程を自分が設計したのかを言語化することが大切です。

ワンポイントアドバイス
職務経歴書は取引額より工程で書く

商社営業の経験は取引金額で示されがちですが、採用側が見たいのは商流のどこを自分で設計したかです。供給元の開拓、価格の決定、与信の判断、物流の設計のうち、どこまで自分の裁量だったかを明記すると評価が変わります。

商社営業に関するよくある質問

商社営業への転職を検討する人からよく出る疑問を5つ整理しました。

商社営業は未経験から目指せますか

専門商社であれば、他業界の法人営業から移るケースは珍しくありません。扱う商材の知識は入社後に覚える前提の求人が多く、必要とされるのは取引先との調整経験です。

一方で総合商社の中途採用は、特定の分野での実務経験や専門性を前提とすることが多くなります。新卒採用が中心の会社もあるため、未経験からの入口としては専門商社のほうが現実的です。

どちらを目指す場合も、与信や在庫といった概念に触れた経験があると評価されやすくなります。

総合商社と専門商社はどちらがきついですか

きつさの種類が違うため、単純な比較はできません。総合商社は勤務地の範囲と案件規模の大きさが負荷になり、専門商社は取引先が固定されるぶん人間関係の逃げ場が少なくなりやすいという違いがあります。

待遇では差がはっきり出ます。業種平均で総合商社479万円、専門商社444万円、50代以上では885万円と634万円です(トレオンメディア 商社の平均年収ランキング)。

負荷の大きさと年収の伸びが対応している構図なので、どこまでの負荷なら引き受けられるかで判断するのが実際的です。

商社営業に語学力はどの程度必要ですか

海外取引を扱う部署では英語でのやりとりが日常的に発生します。ただし入社時点で高い語学力が必須という会社ばかりではなく、入社後に業務の中で身につける人も多くいます。

国内の流通を中心とする専門商社であれば、語学を使わずに働ける職場もあります。求人を見る段階で、取引相手が国内なのか海外なのかを確認しておくと齟齬が減ります。

語学力よりも重視されるのは、条件が合わない相手と粘り強く交渉を続けられるかどうかです。

商社営業に転勤や海外駐在は必ずありますか

総合商社では前提と考えたほうが安全です。7社が拠点を置く都市は海外213都市、国内26都市にのぼり、配属や異動の対象範囲が広くなります(日本貿易会 商社の強み)。

専門商社は国内中心の会社が多く、転勤の範囲も限定的です。地域密着で営業所が少ない会社であれば、転居を伴う異動がほとんどないところもあります。

勤務地は入社後に自分で動かせない条件の代表格です。面接の段階で異動の実績を具体的に聞いておくことをおすすめします。

商社営業を辞めたあとのキャリアは狭くなりますか

狭くはなりません。商流の設計、与信の判断、貿易実務、投資先の管理と、他業界に移しやすい経験が複数あるためです。

むしろ問題になるのは、経験を言語化しないまま応募してしまうことです。取引金額の大きさだけを書くと、会社の看板の話に見えてしまいます。

自分が設計した工程と、そこで動かした関係者の数を具体的に書くと、商社の外でも通用する実績として伝わります。

ワンポイントアドバイス
面接では異動の実績を数字で聞く

転勤の有無は求人票の記載だけでは判断できません。直近3年で同じ職種の人が何人異動し、どの地域へ移ったのかを聞くと実態がつかめます。答えをはぐらかされる場合は、異動が多い職場だと考えておくほうが安全です。

まとめ

商社営業がきついと言われる理由は、労働時間よりも1件の取引で背負う範囲の広さにあります。売買の当事者として、価格の変動、代金の回収、在庫、物流までを担当者が抱えます。

勤務地の条件も負荷になります。主要7社が拠点を置く都市は海外213都市、国内26都市におよび、転勤と時差が前提に組み込まれています(日本貿易会 商社の強み)。

一方で離職率は高くありません。「卸売業,小売業」の一般労働者の離職率は10.7%で、産業計の11.5%を下回ります(厚生労働省 令和6年雇用動向調査 産業別の入職と離職)。きついと言われながら人が残る業界です。

年収は総合商社と専門商社で分けて見る必要があります。業種平均では総合商社479万円、専門商社444万円で、50代以上では885万円と634万円まで差が開きます(トレオンメディア 商社の平均年収ランキング)。上場大手の全社平均はさらに高い水準にありますが、これは職種の平均ではありません。

自分にとってのきつさが実務量なのか、勤務地なのか、評価の仕組みなのかを切り分けてから動くこと。それが商社営業でのキャリアを考えるうえで、いちばん先にやるべき作業です。

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