BtoB営業がきついと言われる理由は、断られる回数の多さではありません。買う側の組織が社内で決められない時間に、営業が最後まで付き合い続けるという構造にあります。
国内BtoB企業の勤務者540名への調査では、直近の稟議で差し戻しを経験した人が57.2%、過去1年で稟議が通らず導入を断念した経験がある人が57.8%でした(ネオマーケティング BtoB企業の社内稟議・承認プロセス実態調査2026)。商談で合意しても、そこから先で止まる案件が半分以上あるということです。
この記事では、組織が買うという購買プロセスの側からBtoB営業のきつさを分解し、年収の相場、1日の流れ、BtoC営業との違い、向き不向き、対処法、転職先までを整理します。
FOCUS AGENT:東田 尚起

株式会社リクルートにてHR領域に従事。
求人広告営業(indeed/リクナビnext)をメインに、転職エージェントとしても従事。
自ら立ち上げた就職系メディアの事業売却を経験し、転職支援と日系企業を中心に複数社のRPO業務も担う。
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株式会社CAREER FOCUS/東田尚起BtoB営業は「会えない」「売れない」のきつさより、「決まらない」のきつさが本体です。同じ営業でも、ここが分かると打ち手がまったく変わりますよ。
BtoB営業がきついと言われる理由


BtoB営業のきつさは、商品が売れにくいことから生まれているわけではありません。買う主体が個人ではなく組織であるために、合意の後にもう一段の手続きが挟まるところから生まれています。
なお、商談期間の長さ、複数の意思決定者への対応、相見積もりでの価格競争といった負荷は法人営業全般に共通する話のため、ここでは深追いしません。詳しくは法人営業がきつい理由で整理しています。
稟議の差し戻しを前提にした提案
BtoB取引では、担当者が納得しても購入は確定しません。社内の稟議にかけ、承認を得て初めて発注になります。
先の調査では、稟議書に記載する項目は平均4.35項目、根拠として用意するデータは平均2.91種類でした。それだけ準備しても57.2%が差し戻しを経験しており、準備量と承認の間に素直な相関がないことが数字に出ています。
営業側から見ると、提案が通ったかどうかの判定が一度で終わりません。差し戻された理由を担当者から聞き取り、資料を作り直し、次の決裁のタイミングを待つという往復が発生します。
この往復には成果が伴わないため、社内の進捗報告では「まだ決まっていない」としか言えません。案件は動いているのに数字が立たない期間が続くことが、精神的な負荷になります。
提出した資料の4割が使われない状況
同じ調査では、営業担当者から提供された資料14項目のうち、実際に稟議を通す上で役立ったと回答された割合は59.8%にとどまりました。裏を返せば40.2%は受け取られたものの役立たなかったということです。
提案書や事例集を作り込んでも、顧客の社内で使われる保証はありません。営業の労力と顧客の社内手続きが、そもそも噛み合っていない場面が一定数あります。
稟議で最も説得力があったとされた根拠の1位は「営業担当者からの提案書」で14.6%、2位は「自社の売上・実績データ」で14.1%でした(ネオマーケティング 稟議を動かす根拠)。営業資料は効く場面では効きますが、全体に占める比率はそこまで高くありません。
費用対効果の説明責任が営業側に寄る構造
稟議が承認される際のポイントとして最も多く挙げられたのは「明確な費用対効果」で43.7%でした。ところが、投資回収シミュレーションを実際に根拠として準備していた人は19.3%にとどまります。
つまり、承認に必要だと分かっているものを、買う側が自力では用意しきれていない状況です。その穴を埋める役割が、実質的に営業担当者へ回ってきます。
顧客企業の投資判断の材料を、社外の人間が想像で組み立てることになります。相手の会計期間、既存費用、人員配置まで踏み込まないと数字が作れません。
商品知識だけでは足りず、顧客の事業の数字を理解する負荷が常時かかります。ここがBtoC営業との負荷の質の違いとして最も大きい部分です。
成果の締めと顧客の予算年度のずれ
営業側の目標は月次や四半期で締まりますが、顧客側の予算は年度単位で組まれています。買いたい気持ちと、買える時期が一致しない場面が構造的に発生します。
年度末に予算消化で急に動く案件がある一方、期初に相談を受けた案件が次の年度まで動かないこともあります。営業個人の努力では動かせない時間です。
さらにBtoB取引は掛取引が基本で、納品してから入金までに間が空きます。受注した月の売上として計上される一方、会社のお金が動くのは先になるため、与信や支払条件の確認も営業の仕事に含まれます。
失注や停滞を「負けた」で終わらせず、提案前・商談中・稟議中のどこで止まったかを案件ごとに記録してください。稟議中で止まる比率が高いなら、必要なのは商談力ではなく費用対効果の資料です。
BtoB営業の年収の相場


BtoB営業という職種区分は公的統計に存在しません。そのため相場を読むときは、所属する産業と企業規模の水準に当てはめる形になります。
世間全体の水準との比較
まず物差しになるのが全体の水準です。給与所得者全体の平均給与は478万円、正社員は545万円、正社員以外は206万円となっています(国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査)。
BtoB営業の求人はこの水準の前後に広く分布します。BtoBだから高い、BtoCだから低いという関係はありません。
分かれ目になるのは扱う商材の単価と、その商材を売っている産業です。同じ提案型の営業でも、産業が違えば月額の水準が数万円単位で変わります。
産業別の賃金水準から読む相場
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の所定内給与額は男女計で月34.06万円でした(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査の概況)。産業別に見ると次のようになります。
| 産業 | 所定内給与額(月額) | 産業計との差 |
|---|---|---|
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 44.03万円 | +9.97万円 |
| 金融業,保険業 | 43.70万円 | +9.64万円 |
| 情報通信業 | 40.60万円 | +6.54万円 |
| 建設業 | 36.63万円 | +2.57万円 |
| 卸売業,小売業 | 34.91万円 | +0.85万円 |
| 産業計 | 34.06万円 | 基準 |
| 製造業 | 33.00万円 | -1.06万円 |
| サービス業(他に分類されないもの) | 28.49万円 | -5.57万円 |
対象は一般労働者の所定内給与額で、BtoB営業だけを抜き出した数字ではありません(厚生労働省 産業別にみた賃金)。それでも、同じ法人向けの提案営業であっても、情報通信業と製造業では月額で7万円以上の開きがあることは読み取れます。
この差は個人の営業力ではなく、産業の収益構造から来ています。転職で年収を上げたい場合、営業スキルを磨くより産業を移る方が効く場面があるのはこのためです。
企業規模と年齢による差
同じ調査では、企業規模別の所定内給与額は大企業38.51万円、中企業32.62万円、小企業30.56万円でした(厚生労働省 企業規模別にみた賃金)。大企業と小企業では月額で約8万円の差があります。
BtoB営業は扱う商材の単価が大きいほど、担当する顧客も大手に寄ります。大手を担当できる会社に在籍しているかどうかが、そのまま水準に反映されやすい仕事です。
年齢による変化も押さえておきます。所定内給与額は20代前半が24.3万円、20代後半が27.9万円、30代前半が31.2万円、30代後半が34.1万円、40代前半が36.4万円と上がります(厚生労働省 性、年齢階級別にみた賃金)。
年収の話をするときは、この年齢の伸びと産業の差と企業規模の差を分けて考えると、自分の現在地が判断しやすくなります。
応募先の年収を読むときは、固定給と賞与の比率、インセンティブの算定基準、担当する顧客の企業規模の3点を確認してください。同じ提示年収でも、変動部分の比率が違えば手元に残る額の安定感が変わります。



産業と企業規模で水準がほぼ決まる、というのはBtoB営業の年収の実務的な結論です。今の会社で頑張るか、産業ごと移るかを分けて考えてみてください。
BtoB営業の仕事内容と1日の流れ


BtoB営業の1日は、顧客と話す時間よりも、顧客が社内を通すための準備に時間が向かいます。顧客の社内手続きを外から支援する仕事だと捉えると、業務の内訳が理解しやすくなります。
午前の社内調整と情報整理
午前中は、前日の商談で出た宿題の処理から始まります。技術的な実現可否は技術部門へ、契約条件は法務や管理部門へ確認を回します。
BtoB営業の提案は、自社の複数部門の合意がないと出せないものが多くあります。売る側も組織として売っているため、社内の巻き込みが遅れるとそのまま提案の遅れになります。
この時間帯に見積書の条件や納期の前提を固めておかないと、午後の商談で持ち帰りが増えます。持ち帰りが増えれば、顧客側の検討も後ろにずれます。
日中の商談と関係者ごとの説明
日中は訪問やオンラインでの商談が入ります。同じ商材でも、現場の担当者に話す内容と、決裁権を持つ層に話す内容は別に用意します。
現場の担当者が知りたいのは運用の手間や既存業務との接続です。決裁側が知りたいのは投資額と回収の見通しで、関心の対象が重なりません。
| 時間帯 | 主な業務 | きつさが出やすい点 |
|---|---|---|
| 午前 | 社内の技術・法務確認と資料修正 | 他部門の回答待ちで手が止まる |
| 日中 | 商談と関係者ごとの説明 | 同じ案件で説明の中身を作り分ける |
| 夕方 | 稟議用の資料整備と費用対効果の試算 | 顧客の社内様式に合わせる手間がかかる |
| 随時 | 既存顧客のフォローと与信・入金確認 | 新規提案の時間を圧迫する |
この表のとおり、商談そのものが占める時間は1日の一部です。前後の準備と社内調整の量が、BtoB営業の実務の重さを決めています。
夕方以降の資料整備と案件管理
夕方は、顧客が稟議にかけるための材料を整える時間になります。費用対効果の試算を顧客の社内様式に合わせて作り直す作業が入ることも珍しくありません。
並行して、案件管理システムへの入力と次のアクションの整理を行います。案件数が多いほど、この記録作業が残業の主因になります。
既存顧客の入金状況や与信の確認も営業の担当範囲に含まれる会社があります。売って終わりではない点が、個人向けの販売職との大きな違いです。
同じ提案でも、現場向けと決裁者向けで資料を分けて持っておくと商談の往復が減ります。現場向けは運用手順、決裁者向けは投資額と回収期間を先頭に置く形が扱いやすくなります。
BtoB営業とBtoC営業の違い


BtoB営業とBtoC営業の違いは、扱う金額の大小ではありません。決める人と使う人と払う人が同一かどうかという、購買の構造の違いです。
買う主体の違いと市場の大きさ
BtoCでは、その場にいる本人が決めて支払います。BtoBでは使う部署、決裁する上長、支払う経理がそれぞれ別で、全員の合意が揃って初めて発注になります。
市場の規模も大きく異なります。2024年の国内のBtoB-EC市場規模は514.4兆円で、BtoC-EC市場規模の26.1兆円を大きく上回りました(経済産業省 令和6年度電子商取引に関する市場調査)。
同じ調査では、取引全体に占める電子商取引の比率はBtoB-ECで43.1%、BtoC-ECで9.8%でした。企業間の取引は金額も電子化の進み方も、個人向けとは別の世界で動いています。
BtoC営業との比較表
購買の構造が違うと、営業に求められる動き方も変わります。主な違いを整理すると次のようになります。
| 観点 | BtoB営業 | BtoC営業 |
|---|---|---|
| 決める人 | 使う部署・決裁者・経理が分かれる | 本人が決めて支払う |
| 検討の進み方 | 社内の稟議と承認を経て決まる | その場または短期間で決まる |
| 説得の材料 | 費用対効果の数字と社内説明のしやすさ | 本人の好みや必要性 |
| 入金 | 納品後の掛取引が基本 | 購入時点での支払いが中心 |
| 失注の見え方 | 検討が止まったまま結論が出ない | 買わないという結論が早く出る |
比較して分かるのは、BtoB営業には「はっきり断られない」という特有の負荷があることです。結論が出ないまま案件が残り続ける状態は、明確な失注よりも消耗します。
BtoB営業の中での手法の違い
BtoBの中にも、顧客との出会い方で複数の型があります。新規開拓、既存顧客を回るルート営業、販売代理店を通す代理店営業が代表的です。
新規開拓では電話や問い合わせフォームからの接触が入口になります。この入口に特化した負荷については法人営業のテレアポがきつい理由で扱っています。
商材によっても難度は変わります。形のない商材を扱うSaaS営業やIT営業、形のある商材を扱うメーカー営業では、提案の作り方も評価指標も別物です。
求人票の「法人営業」という表記だけでは実務が分かりません。新規開拓か既存深耕か代理店経由か、直近1年の受注が主にどの入口から生まれているかを面接で聞いておくと、入社後の落差を減らせます。
BtoB営業に向いている人と向いていない人


BtoB営業の向き不向きは、話がうまいかどうかでは決まりません。顧客の社内事情を一緒に整理し、決裁までの道筋を組み立てられるかどうかで分かれます。
向いている人の特徴
向いているのは、顧客の社内手続きから逆算して段取りを組める人です。いつまでに誰の承認が必要かを聞き出し、そこから逆算して資料の準備時期を決められる動き方が成果につながります。
費用対効果を自分の言葉で説明できる人も強くなります。稟議の承認ポイントの1位が明確な費用対効果である以上、ここを語れるかどうかが直接効きます。
- 顧客の決裁の流れを質問で引き出せる
- 投資額と回収の見通しを数字で示せる
- 自社の技術部門や法務を早めに巻き込める
- 結論が出ない期間があっても記録を淡々と続けられる
4つに共通するのは、自分の商談の外側にある工程に関心を持てるかどうかです。目の前の会話だけで完結させようとすると、BtoBでは案件が進みません。
向いていない人の特徴
向いていないのは、その場で結論が出ないと落ち着かない人です。検討中のまま数か月が過ぎる状態に耐えられないと、日々の消耗が大きくなります。
また、社内調整を面倒だと感じる人も苦しくなります。BtoB営業では自社側の合意形成にも時間を使うため、単独で完結したい志向とは相性がよくありません。
ただし、向いていないと感じる原因が扱う商材の単価や決裁の重さにある場合も多くあります。単価の低い商材に移るだけで、決裁の階層が減って負荷が軽くなることもあります。
きついと感じたとき、それが営業という仕事への不適合なのか、今の商材の決裁の重さへの不適合なのかを分けてください。後者なら、同じBtoB営業のまま商材を変えるだけで状況が変わります。



「決まらない期間が苦しい」という相談は本当に多いです。これは性格の問題ではなく、商材と決裁の重さの組み合わせで大きく変わる部分ですよ。
BtoB営業がきついと感じたときの対処法


きついと感じたときに最初にやることは、転職の検討ではありません。案件がどこで止まっているかを特定し、打ち手を絞り込むことです。
案件が止まる位置を特定する
直近半年の案件を、提案前で止まったもの、商談中で止まったもの、稟議中で止まったものに分けてください。どこに偏っているかで必要な対策が変わります。
| 止まる位置 | 考えられる原因 | 先に試すこと |
|---|---|---|
| 提案前 | 接点の数が足りない | 接触の母数と反応率を分けて計測する |
| 商談中 | 課題の把握が浅い | 現場と決裁者の関心を分けて聞き直す |
| 稟議中 | 費用対効果の材料が不足 | 投資額と回収期間の試算を標準資料にする |
| 受注後 | 与信や入金の確認が後手 | 契約時に支払条件を書面で固める |
この切り分けをしないまま行動量だけを増やすと、効かない場所に時間を投じることになります。まず記録を取るところから始めるのが近道です。
稟議を通すための材料を標準化する
稟議で必要とされる費用対効果の試算を、案件ごとにゼロから作るのは現実的ではありません。自社の標準資料として型を用意しておく方が負担は軽くなります。
投資額、想定される削減時間や増加売上、回収期間の3点だけでも定型化しておけば、顧客の担当者がそのまま社内で使えます。
差し戻しの理由を案件ごとに残しておくと、型の改善点も見えてきます。個人の工夫で終わらせず、チームで共有できる形にすると効果が続きます。
商材と産業を変える選択肢
打ち手を尽くしても負荷が変わらない場合は、扱う商材と産業を変える選択肢があります。決裁の重さは商材の単価と導入範囲でほぼ決まるためです。
年収の面でも、産業を移す効果は小さくありません。産業計34.06万円に対し、情報通信業は40.60万円、金融業,保険業は43.70万円と水準そのものが異なります(厚生労働省 産業別にみた賃金)。
30代で経験を持ったまま産業を移す動き方については、30代向けの転職エージェントの比較も判断材料になります。
転職を判断する前に、案件が止まる位置の記録を3か月続けてください。稟議中の停滞が原因だと分かれば、会社を変えずに資料の型を変えるだけで改善する場合があります。
BtoB営業の経験が活きる転職先


BtoB営業の経験で評価されるのは、受注金額そのものよりも、組織の決裁を動かした再現性です。どの業界へ移る場合も、この部分を職務経歴書の中心に置くと伝わりやすくなります。
同じBtoBのまま産業を移る道
最も距離が短いのは、BtoB営業のまま産業を移る道です。購買プロセスの構造は産業が変わっても共通しているため、稟議を通した経験はそのまま使えます。
離職率の面でも、企業間取引が中心の産業は極端に高いわけではありません。令和6年の一般労働者の離職率は、産業計11.5%に対して製造業8.8%、情報通信業9.8%、卸売業,小売業10.7%、金融業,保険業7.4%でした。
比較のために挙げると、サービス業(他に分類されないもの)は19.0%、宿泊業,飲食サービス業は18.1%です(厚生労働省 令和6年雇用動向調査結果の概況)。BtoB中心の産業は、きついと語られる割に人が定着している側に入ります。
購買プロセスの理解を前工程で使う道
もう一つは、営業の前工程へ移る道です。BtoBマーケティングやインサイドセールスでは、顧客が社内で何に詰まるかを知っていること自体が設計の材料になります。
稟議で使われる資料が何かを実務で見てきた経験は、コンテンツや商談化の設計に直接つながります。営業現場を知らない担当者との差が出やすい部分です。
カスタマーサクセスや事業企画も接続先になります。いずれも、顧客企業の意思決定の順序を理解していることが前提になる職種です。
受注件数や達成率だけでなく、どの階層の決裁まで関与し、どんな材料で承認を得たかを1案件だけ具体的に書いてください。BtoBの採用側が知りたいのは金額よりも決裁を動かした過程です。



「大型案件を受注しました」だけでは差がつきません。誰をどう動かして稟議を通したのかまで書けると、書類の通過率が変わります。
BtoB営業に関するよくある質問
BtoB営業への転職を検討する際によく挙がる質問を整理します。
BtoB営業と法人営業は何が違いますか?
呼び方の違いで、指している仕事はほぼ同じです。BtoBはビジネス・トゥ・ビジネスの略で企業間取引を指し、日本語では法人営業と呼ばれます。
強いて違いを挙げれば、BtoB営業という言い方はIT業界やSaaS業界で使われることが多く、法人営業は金融や商社など従来型の業界で使われる傾向があります。
仕事内容としての共通部分は法人営業がきつい理由にまとめています。
BtoB営業は未経験からでも転職できますか?
未経験の採用を行っている会社はあります。ただし、扱う商材の単価が高いほど業界知識が求められるため、入口の難度は商材によって変わります。
未経験から入りやすいのは、単価が比較的低く決裁の階層が浅い商材です。逆に大企業向けの大型商材は、業界経験者を優先する求人が多くなります。
BtoC営業からの転換であれば、これまでの経験を「短期で決める力」ではなく「相手の判断材料を揃える力」として整理し直すと接続しやすくなります。
BtoB営業の商談はどのくらいで決まりますか?
商材と金額によって幅があり、一律の期間はありません。決裁の階層が増えるほど長くなるという関係が基本になります。
期間そのものより、稟議で止まる可能性を織り込んでおく方が実務的です。調査では57.8%が過去1年で稟議が通らず導入を断念した経験があると回答しています。
つまり、合意してから承認までの区間が最も落ちやすい場所です。この区間の見通しを商談中に確認しておくと、着地の予測精度が上がります。
BtoB営業のノルマはBtoC営業より厳しいですか?
厳しさの種類が違います。BtoCは件数を積む負荷が中心ですが、BtoBは1件あたりの金額が大きいため、1件の失注が目標に与える影響が大きくなります。
また、四半期や月次で締まる自社の目標と、年度で動く顧客側の予算がずれるため、期末に案件が集中しやすい構造もあります。
件数を追う負荷と、少数の大型案件に依存する負荷のどちらが自分に合うかで判断するのが現実的です。
BtoB営業の経験は他業界でも評価されますか?
評価されます。特に、複数の関係者の合意を取り付けた経験は、職種を越えて使える能力として見られます。
営業以外では、BtoBマーケティング、カスタマーサクセス、事業企画、購買や調達といった職種で接点があります。いずれも組織の意思決定の順序を理解していることが前提になる仕事です。
評価されにくいのは、受注金額だけを並べた職務経歴書です。どの階層の決裁をどう動かしたかを書けるかどうかで、書類の通り方が変わります。
BtoB営業の面接では「直近で最も難しかった稟議」を具体的に聞かれることがあります。商材名や金額ではなく、誰が反対し、どの材料で合意に変わったかを1分で話せるよう整理しておいてください。
まとめ
BtoB営業がきついと言われる理由は、断られる回数ではなく、買う側の組織が決められない時間に付き合い続ける構造にあります。国内BtoB企業の勤務者540名への調査では、直近の稟議で差し戻しを経験した人が57.2%、稟議が通らず導入を断念した経験がある人が57.8%でした。
営業が提供した資料のうち、実際に稟議で役立ったのは59.8%にとどまります。承認の決め手とされる明確な費用対効果を、買う側が自力で用意できていない現実があり、その穴埋めが営業側の負荷になっています。
年収は職種名ではなく、産業と企業規模で水準が決まります。一般労働者の所定内給与額は産業計で34.06万円、金融業,保険業で43.70万円、製造業で33.00万円、企業規模別では大企業38.51万円に対し小企業30.56万円でした。
一方で、企業間取引が中心の産業の離職率は産業計を下回ります。令和6年の一般労働者の離職率は産業計11.5%に対し、製造業8.8%、金融業,保険業7.4%でした。きついと語られる割に、人は定着している側の仕事です。
きついと感じたときは、案件が提案前・商談中・稟議中のどこで止まっているかを記録するところから始めてください。稟議中の停滞が原因であれば、費用対効果の試算を標準資料にするだけで状況が変わることがあります。









