ホンダの営業がきついと言われる背景には、四輪だけでなく二輪・パワープロダクツ・航空機まで抱える事業構成があります。売る商品も、売る相手も、部署によってまったく違います。
さらに混同されやすいのが会社の違いです。本田技研工業株式会社(東証プライム上場)の営業部門と、街のHonda Cars各社の販売職は別の会社の別の仕事で、有価証券報告書の平均年間給与932万円はメーカー本体の数字にあたります(本田技研工業 有価証券報告書 第102期)。
この記事では有価証券報告書と公式の採用情報、社員口コミの公開集計値だけを使い、きついと言われる理由、年収の実態、労働時間、営業職の種類、向き不向き、転職先までを切り分けて整理します。
FOCUS AGENT:東田 尚起

株式会社リクルートにてHR領域に従事。
求人広告営業(indeed/リクナビnext)をメインに、転職エージェントとしても従事。
自ら立ち上げた就職系メディアの事業売却を経験し、転職支援と日系企業を中心に複数社のRPO業務も担う。
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株式会社CAREER FOCUS/東田尚起最初に押さえてほしいのは、「ホンダの営業」と一口に言っても、メーカー本体の営業とHonda Carsの販売職は別会社の別職種だという点です。ここを混ぜたまま調べると、年収も働き方も噛み合わない情報にぶつかります。
ホンダの営業がきついと言われる理由


ホンダの営業がきついと語られる理由は、労働時間の長さではありません。事業の広さ、四輪事業の採算、二輪に偏った台数構成、そして会社が分かれている組織構造の4点に集約されます。
順に、公開資料で確認できる数字とともに見ていきます。
本体とHonda Carsの違い
本田技研工業株式会社は1948年9月設立、本社は東京都港区虎ノ門、資本金は860億円です。従業員数は連結195,109名、単独32,547名で、グループ会社は346社にのぼります(Honda 企業情報サイト 会社概要)。


一方で、街で見かけるHonda Cars各社の多くはホンダの完全子会社ではありません。有価証券報告書の関係会社一覧を見ると、国内の四輪販売会社で連結子会社に入っているのは9社、持分法適用会社が1社にとどまります。
残りは地場資本の独立した販売会社で、給与体系も人事制度も各社が独自に決めています。つまり同じ看板を掲げていても、雇用主はまったく別の法人です。
- 本田技研工業株式会社の営業は、製品企画・販売施策・海外市場開拓などを担うメーカー側の職種
- Honda Cars各社の販売職は、来店客や地域顧客に車両を販売するディーラー側の職種
- 有価証券報告書の平均年間給与はメーカー本体(提出会社)の数字で、Honda Cars社員は対象外
この3点を混ぜると、年収も働き方も食い違う情報にぶつかります。カーディーラーの販売職そのもののきつさはカーディーラー営業がきつい理由の記事に整理しているため、この記事ではメーカー本体側の話を中心に扱います。
四輪事業の営業損失
2026年3月期の四輪事業は、外部顧客への売上収益13兆8,633億円に対し、営業損失1兆4,111億円を計上しました。前期にくらべて1兆6,549億円の減益です(本田技研工業 有価証券報告書 第102期)。
要因として挙がっているのは、EV関連損失の影響と関税の影響です。全社でも営業損失4,143億円、親会社の所有者に帰属する当期損失4,239億円という数字になりました。
四輪の営業に関わる人にとって、これは日々の目標だけでなく、前提そのものが動く環境を意味します。商品計画も投資計画も見直しがかかるため、立てた施策が途中で組み替わる場面が増えます。
数字が伸びないから苦しいというより、数字の置き方そのものが揺れるところに、この事業のきつさがあります。
台数の大半を占める二輪
ホンダを自動車メーカーとして見ていると見落とすのが、台数構成です。2026年3月期のHondaグループ販売台数は、二輪事業が2,210万1千台、四輪事業が338万7千台でした。
台数で見ると二輪が四輪の6倍以上を占めます。しかも二輪の内訳はアジアが1,873万8千台で、日本はわずか20万5千台です。
| 事業 | Hondaグループ販売台数(2026年3月期) | 前期比 |
|---|---|---|
| 二輪事業 | 2,210万1千台 | 7.4%増 |
| 四輪事業 | 338万7千台 | 8.9%減 |
| パワープロダクツ事業 | 358万9千台 | 3.0%減 |
| うち二輪のアジア | 1,873万8千台 | 7.2%増 |
| うち二輪の日本 | 20万5千台 | 8.5%減 |
出典は本田技研工業 有価証券報告書 第102期です。二輪事業は売上収益4兆188億円に対して営業利益7,319億円を確保しており、赤字の四輪を二輪が支える構図になっています。
この構造は営業職の日常にも効いてきます。新興国の需要動向が全社の業績を左右するため、国内四輪の感覚だけで事業を語れません。
航空機まで広がる事業範囲
ホンダの事業はパワープロダクツ、さらに航空機と航空機エンジンにまで広がります。発電機、除雪機、耕うん機、芝刈機、船外機といった製品群がパワープロダクツ事業にあたります。
有価証券報告書では、航空機および航空機エンジンの営業損失は372億円と記載されています。航空機事業を担うホンダエアクラフトカンパニーの債務超過額は2,917億9,300万円です。
長期投資の段階にある事業を抱えているということは、社内の資源配分の議論がそれだけ複雑になるということでもあります。
二輪、四輪、パワープロダクツ、航空機という4つの時間軸が同居している会社で、自分の担当領域の優先順位がどこに置かれるかは、年度ごとに変わります。



「きつい」の中身が、時間なのか、事業の先行きなのか、所属する会社なのかで打ち手は変わります。ホンダの場合は3つ目の「どの会社の営業か」が特に効くので、求人票の社名を必ず確認してください。
ホンダの営業求人は、本田技研工業株式会社の募集と、ホンダモビリティ各社やHonda Cars各社の募集が混在します。年収も転勤範囲も評価制度も別なので、応募前に雇用主の正式名称を読み、有価証券報告書の数字が当てはまる会社かどうかを見分けてください。
ホンダの営業の年収


ホンダの営業の年収を調べるときは、出典の性質を最初に分けておく必要があります。一次情報は有価証券報告書、参考値は口コミサイトの集計です。
この2つは対象範囲がまったく違うため、単純に比べられません。
有価証券報告書の平均年間給与
2026年3月期の有価証券報告書によると、提出会社である本田技研工業株式会社の平均年間給与は9,326千円です。平均年齢43.9歳、平均勤続年数21.0年、従業員数32,547名という条件での数字になります。
前事業年度からの増減率はプラス4.1%です。注記には、平均年間給与に賞与および基準外賃金を含むと明記されています。
| 項目 | 2026年3月期(提出会社) |
|---|---|
| 平均年間給与 | 9,326千円 |
| 平均年齢 | 43.9歳 |
| 平均勤続年数 | 21.0年 |
| 従業員数 | 32,547名 |
| 対前事業年度増減率 | 4.1% |
出典は本田技研工業 有価証券報告書 第102期で、Honda IR資料室から原本を確認できます。
国税庁の調査では給与所得者全体の平均給与は478万円、正社員に限っても545万円です(国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査)。約932万円はその1.7倍を超える水準にあたります。
ただしこれは営業職だけの数字ではありません。研究開発も生産も管理も含んだ全社平均であり、平均年齢43.9歳という条件つきの値である点は押さえておく必要があります。
口コミ集計に見る営業職の年収
職種別の目安としては、社員口コミの集計値が参考になります。OpenWorkの集計では本田技研工業の回答者平均年収は757万円、年収範囲は144万円から1,800万円、平均年齢34歳、回答者は正社員1,324人です(OpenWork 本田技研工業の年収・給与制度)。
職種別では営業が128人の回答で732万円、範囲は400万円から1,600万円でした。
| 職種 | 回答者数 | 平均年収 | 年収範囲 |
|---|---|---|---|
| 企画 | 72人 | 861万円 | 480万〜1,500万円 |
| 研究開発 | 115人 | 817万円 | 400万〜1,800万円 |
| 開発 | 135人 | 816万円 | 400万〜1,400万円 |
| 購買 | 51人 | 789万円 | 400万〜1,450万円 |
| 営業 | 128人 | 732万円 | 400万〜1,600万円 |
| 管理 | 90人 | 736万円 | 400万〜1,600万円 |
| 製造 | 42人 | 646万円 | 300万〜1,400万円 |
出典はOpenWorkです。同サイトの集計では自動車・自動車部品・輸送機器業界の平均年収が631万円で、本田技研工業は126万円高い水準とされています。
平均年齢34歳という集計条件のため、有価証券報告書の932万円より低く出ます。年齢構成の違いを踏まえずに2つの数字を並べると、実態を読み違えます。
販売会社の年収を有報で読めない理由
Honda Cars各社の営業職の年収は、有価証券報告書からは読み取れません。有価証券報告書の「平均年間給与」は提出会社である本田技研工業株式会社のみを対象とした指標だからです。
独立資本の販売会社は上場もしておらず、平均年収の公開された集計値は確認できませんでした。求人票に記載された月給と年間休日、賞与実績から個別に判断するほかありません。
参考になるのは、有価証券報告書の参考情報に載る直営販社の男女賃金差異です。ホンダモビリティ中部が66.8%、ホンダモビリティ中四国が67.9%、ホンダモビリティ近畿が68.8%と、いずれも全労働者ベースで7割前後にとどまります。
管理職に占める女性労働者の割合も、ホンダモビリティ中四国0.9%、ホンダモビリティ中部0.6%と低い水準です。数字の読み方には職種構成の違いが絡みますが、販売現場の人員構成が偏っていることは確認できます。
932万円は本田技研工業単体の全社員平均、757万円は口コミ回答者の平均、732万円は口コミの営業職平均です。母集団も平均年齢も違うので、どれか1つを自分の想定年収として使わず、応募先の会社と自分の年齢に近い条件の数字を選んでください。
ホンダの労働時間と働き方の実態


ホンダの働き方は、時間の面では落ち着いています。社員口コミの集計値を見るかぎり、長時間労働が中心的な不満になっているわけではありません。
不満が集まっているのは、評価と育成の側です。
残業時間と有給消化率
OpenWorkの集計では、本田技研工業の月間残業時間は25.7時間、有給休暇消化率は94.1%です。回答者は2,136人となっています(OpenWork 本田技研工業の社員クチコミ)。
有給消化率が9割を超える大手メーカーはそう多くありません。制度が形だけで終わっていないことは、この数字から読み取れます。
残業25.7時間は、いわゆる激務型の営業職とは距離があります。営業のきつさを労働時間で測るなら、営業がきつい業界ランキングの記事で扱っている業界のほうが厳しい水準です。
社員評価スコアの偏り
同じくOpenWorkの社員による会社評価スコアは総合3.25、回答者2,136人です。注目すべきは8項目の内訳が大きく割れている点になります。
| 評価項目 | スコア |
|---|---|
| 法令順守意識 | 4.8 |
| 待遇面の満足度 | 3.7 |
| 風通しの良さ | 3.2 |
| 社員の相互尊重 | 3.0 |
| 社員の士気 | 2.8 |
| 人事評価の適正感 | 2.7 |
| 20代成長環境 | 2.7 |
| 人材の長期育成 | 2.5 |
| 総合評価 | 3.25 |
出典はOpenWork 本田技研工業の社員クチコミです。法令順守意識4.8に対して人材の長期育成2.5という開きは、守りの制度は整っているが、育成と評価への納得感が薄い状態を示しています。
20代成長環境2.7と人事評価の適正感2.7が並んでいる点も見逃せません。若手が伸びる実感を持ちにくく、その評価にも納得しにくいという二重の不満が、営業職のきつさとして語られる中身にあたります。
働き方の制度面の指標
有価証券報告書に記載された提出会社の指標も、働き方を測る材料になります。管理職に占める女性労働者の割合は3.6%、男性労働者の育児休業取得率は116.8%です。
育児休業取得率が100%を超えるのは、過年度に生まれた子に係る取得者を含めて算定しているためだと注記されています。労働者の男女の賃金の差異は全労働者で72.8%、正規雇用労働者で74.3%でした。
労働組合員数は28,848名で、有価証券報告書には労使関係は安定していると記載されています。



残業25.7時間・有給94.1%という数字だけ見ると、働きやすい会社に見えます。ただし評価スコアの内訳を見ると、不満の中身は時間ではなく「評価と育成」に寄っていることがわかります。
労働時間が理由で辞めたいのか、評価に納得できなくて辞めたいのかで、次に選ぶべき会社は変わります。前者なら残業時間と有給消化率、後者なら人事評価の適正感と人材の長期育成のスコアを、応募先ごとに比べてみてください。
ホンダの営業職の種類と役割


ホンダは職種体系を「Sales(営業)」「Engineering(生産)」「Development(研究開発)」「Buying(購買)」「Administration(管理)」の5領域に分けています。
営業領域はさらに国内営業、海外営業、カスタマーサービスに分かれます(Honda新卒採用サイト 職種紹介)。
国内営業の仕事内容
国内営業は、二輪・四輪・ライフクリエーションそれぞれの分野で市場開拓、商品企画、販売施策の立案と実行を担います。
公式の職種紹介で特徴的なのは、業務として販売会社の経営・人材育成の支援が明記されている点です。顧客に車を売るのではなく、売る会社を支える仕事だと位置づけられています。
現場で拾った声を研究開発部門や生産部門へ戻す役割も担います。製品を届けるだけでなく、生み出すところから関わる裾野の広さが、この職種の説明として挙げられています。
個人顧客への販売を想定して入社すると、ここで期待とのずれが生じます。店頭での販売を希望するなら、応募先はHonda Cars各社になります。詳しくはカーディーラー営業の記事を参照してください。
海外営業の仕事内容
海外営業は、北米、南米、欧州、アフリカ・中近東、アジア・大洋州、中国などを舞台に、地域ごとの販売戦略を立案します。公式の職種紹介では連結総売上高に占める海外比率は80%と説明されています。
販売網の構築と強化、マーケティング活動、製品や部品の輸出まで業務範囲は広く、駐在の機会も含まれます。
二輪の販売台数の大半がアジアに集中している以上、この職種が担う数字の規模は国内営業より大きくなります。時差のある相手と、通貨も規制も異なる市場を同時に動かす負荷が、きつさとして語られる要因です。
カスタマーサービスの仕事内容
カスタマーサービスは、購入後の満足度向上に関わる領域です。全社的なサービス戦略の企画から、国内外の販売店・代理店に向けたサービス体制の構築支援までを担当します。
公式の説明では「1台目はセールスが売り、2台目はサービスが売る」という考え方が紹介されています。直接の販売活動とは別の形で、次の購入につなげる役割です。
海外現地法人に駐在してサービス企画を担う機会もあると記載されています。
二輪の国内営業を担う子会社
国内営業の説明には注記があり、二輪の国内営業活動は主に子会社の株式会社ホンダモーターサイクルジャパンが担っていると明記されています。本田技研工業は同社に対する商品販売機能や生産関連の窓口機能を持つ位置づけです。
有価証券報告書の関係会社一覧では、国内の二輪販売会社のうち連結子会社は1社と記載されています。四輪と同じく、二輪の販売網も本体とは別法人で構成されています。
事業領域の広さについてはHonda新卒採用サイト 事業領域にも整理されています。二輪、四輪、ライフクリエーション、航空機および航空機エンジン、ロボット技術という並びです。
メーカー営業全般の仕事の流れはメーカー営業がきつい理由の記事に整理しているため、ここでは重ねて扱いません。
同じホンダの営業でも、四輪国内営業、二輪の海外営業、パワープロダクツの販売企画では、扱う市場も数字の単位も違います。面接では希望する事業領域を具体的に伝え、配属の考え方を確認しておくと、入社後のずれを減らせます。
ホンダの営業に向いている人と向いていない人
向き不向きは、性格よりも「どんな相手と仕事をしたいか」で分かれます。ホンダのメーカー営業は、顧客より販売会社や海外拠点と向き合う時間が長いためです。
ここでは公開情報から読み取れる特徴を整理します。
向いている人の特徴
相手が組織である仕事に手応えを感じる人は合います。国内営業は販売会社の経営支援、海外営業は地域の販売網構築が中心で、成果が出るまでの時間が長い仕事です。
- 自分で売るより、売れる仕組みを作るほうに関心がある
- 新興国の市場動向やアジアの需要構造に興味がある
- 二輪・四輪・パワープロダクツという異なる商材を横断して学びたい
- 数字が動くまで時間がかかっても、途中経過を積み上げられる
事業環境の変化を前提として受け止められるかも分かれ目になります。四輪事業が1兆円を超える営業損失を計上した年度では、計画の組み替えが避けられません。
向いていない人の特徴
自分の成果を短いサイクルで確認したい人には、しんどい環境になりがちです。評価スコアで人事評価の適正感が2.7、人材の長期育成が2.5という水準にある点も、この傾向と重なります。
- 成果がその月のうちに数字で返ってくる仕事を望んでいる
- 顧客と直接向き合って感謝される場面を求めている
- 大企業の合意形成や調整の手数を負担に感じる
- 事業方針の変更に合わせて担当領域が変わることを避けたい
2つ目に当てはまる場合は、メーカー本体よりも販売現場のほうが向いている可能性があります。ルート営業の記事のように、顧客と継続的に向き合う職種も選択肢に入ります。
女性が働く環境としての評価
有価証券報告書では、提出会社の管理職に占める女性労働者の割合は3.6%です。国内労働協約適用会社を対象とした女性管理職数比率は2021年3月期比で2.1倍まで伸びており、2031年3月期に4倍という目標が掲げられています。
男性労働者の育児休業取得率は116.8%、労働者の男女の賃金の差異は全労働者で72.8%でした。育休の取得は定着している一方、管理職比率はまだ低い水準にあります。
販売会社側はさらに差が開きます。直営販社のホンダモビリティ各社では、管理職に占める女性労働者の割合が0.6%から4.4%の範囲に収まっています。女性のキャリアを軸に転職先を比べるなら、女性向け転職エージェントの記事も参考になります。
営業に向いているかを性格で考えると答えが出にくくなります。個人顧客と向き合いたいのか、販売会社や海外拠点という組織を動かしたいのかを先に決めると、メーカー本体と販売会社のどちらを受けるべきかが自然に絞れます。
ホンダの営業がきついと感じたときの対処法


きついと感じたときは、原因が事業なのか、所属する会社なのか、職務内容なのかを先に切り分けます。ホンダは事業領域が広いため、社内の移動だけで状況が変わる場合があります。
3つの打ち手を順に見ていきます。
担当する事業領域を変える
二輪、四輪、パワープロダクツでは、業績の方向も市場も違います。2026年3月期でいえば、四輪事業が営業損失1兆4,111億円である一方、二輪事業は営業利益7,319億円で前期比10.3%の増益でした。
同じ会社の中でも、追い風の事業と向かい風の事業が同居している状態です。国内四輪の閉塞感が理由なら、二輪の海外営業やパワープロダクツの販売企画は違う景色になります。
提出会社の従業員数をセグメント別に見ると、四輪事業25,911名、二輪事業5,804名、パワープロダクツ事業及びその他832名です。二輪は台数の主役でありながら、本体の人員では少数派にあたります。
メーカーと販売会社の立ち位置を見直す
Honda Cars各社で働いていて、商品企画や販売施策の立案に関わりたい場合、メーカー本体の中途採用が選択肢になります。逆に、本体の営業で顧客と直接向き合えないことが不満なら、販売現場のほうが合っている可能性があります。
直営販社の側も規模を拡大しています。2023年4月には中国・四国地区の直営3社が統合し、5県で82拠点、社員数1,500人規模のホンダモビリティ中四国が発足しました(日本自動車会議所 自動車産業インフォメーション)。
有価証券報告書には、ホンダモビリティ北海道、東北、北関東、南関東、中部、近畿、中四国、九州の8社が並びます。広域化した販社では、店舗運営だけでなく企画や管理の職務も生まれています。
転職を検討する
事業も所属も変えられない事情があるなら、社外に目を向ける段階です。判断の軸は、扱う商材の重さと海外比率、そして評価サイクルの長さになります。
ホンダの営業経験は、販売網を動かした経験として整理すると伝わりやすくなります。代理店政策、販売目標の設計、拠点の業績改善支援といった経験は、他業界でも需要があります。
年代によって評価される点は変わります。30代なら実務の再現性、40代ならマネジメントと事業計画の経験が中心になるため、30代向け転職エージェントの記事と40代向け転職エージェントの記事で自分の年代に合う進め方を確認してください。



社内の異動で解決できる不満なのかどうかを、転職活動を始める前に一度整理しておくと遠回りが減ります。ホンダは事業の幅が広いぶん、社内で選べる選択肢も多い会社です。
二輪の海外営業、パワープロダクツの販売企画、カスタマーサービスと、本体の中だけでも営業の持ち場は複数あります。転職活動と並行して社内公募や異動希望の制度を確認すると、比較の材料が増えて判断が早くなります。
ホンダの営業経験が活きる転職先


ホンダの営業経験は、個人への販売実績ではなく、販売網や海外拠点を動かした経験として評価されます。
どのスキルがどこで効くかを整理します。
評価されやすいスキル
まず挙がるのは、代理店・販売会社を通じて数字を作った経験です。自社の営業だけで完結せず、他社の経営者や店長を動かして成果を出す動き方は、間接販売を採る業界で通用します。
- 販売会社の経営支援や人材育成支援を通じた間接的な業績改善
- 海外拠点と進めた販売戦略の立案と現地調整
- 二輪・四輪・パワープロダクツという複数商材の市場理解
- 事業計画の変更に合わせて施策を組み替えた経験
海外比率の高い環境で働いた経験も強みになります。連結総売上高に占める海外比率80%という事業構造の中で、現地の販売網と折衝した実績は具体的に語れる材料です。
転職先の選択肢
親和性が高いのは、同じく間接販売の比重が大きい業界です。自動車部品メーカー、専門商社、モビリティサービス、産業機械などが挙がります。
| 転職先 | 活きる経験 | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|
| 自動車部品メーカーの営業 | 完成車メーカーとの折衝、海外拠点との調整 | 取引先の集中度と価格交渉の位置づけ |
| 専門商社の営業 | 販売網の構築と与信を含む取引設計 | 扱う商材の粗利構造と担当範囲 |
| モビリティ関連のサービス企業 | 販売会社の業績改善支援、拠点運営の理解 | 事業の収益化フェーズと投資方針 |
| 法人向けSaaSの営業 | 目標設計と数字の管理、提案の型づくり | 評価サイクルの短さへの適応 |
表の4つに共通するのは、個人客への販売力ではなく組織を動かす力が問われる点です。法人営業の環境差についてはメーカー営業の記事と営業がきつい業界ランキングの記事も合わせて読むと比較しやすくなります。



職務経歴書では「何台売ったか」より「どの販売会社をどう動かしてどれだけ改善したか」を書くほうが刺さります。相手が組織だった経験は、そのまま強みとして整理できます。
担当した販売会社の数、拠点数、支援によって動いた台数や粗利を、数字で並べてみてください。個人の販売実績より、他社を動かして出した成果のほうが、メーカー営業の経験としては評価されやすくなります。
ホンダの営業に関するよくある質問
ここまでの内容を踏まえ、検索で多く見られる疑問に回答します。
ホンダの営業は本当にきついですか?
労働時間という意味では、きついとは言いにくい水準です。OpenWorkの集計では月間残業25.7時間、有給休暇消化率94.1%で、回答者は2,136人となっています。一方で社員による会社評価の総合スコアは3.25にとどまり、人材の長期育成2.5、人事評価の適正感2.7、20代成長環境2.7と低い項目が並びます。きつさの中身は時間ではなく、評価と育成への納得感、そして事業環境の変化の大きさにあると読むのが実態に近いと考えられます。四輪事業が営業損失1兆4,111億円を計上した年度では、施策の前提が年度途中でも動きます。
ホンダの営業の年収はいくらですか?
本田技研工業株式会社の2026年3月期有価証券報告書によると、提出会社の平均年間給与は9,326千円です。平均年齢43.9歳、平均勤続年数21.0年という条件で、研究開発や生産も含む全社平均にあたります。営業職に限った目安としては、OpenWorkの職種別集計で営業128人の平均が732万円、範囲は400万円から1,600万円でした。前者は全社平均、後者は平均年齢34歳の口コミ回答者の値なので、単純に比べられません。自分の年齢に近い条件の数字を選んで参考にしてください。
Honda Carsの営業と本社の営業は同じ会社ですか?
別の会社です。本田技研工業株式会社は東京証券取引所に上場するメーカーで、有価証券報告書の関係会社一覧では国内の四輪販売会社のうち連結子会社は9社、持分法適用会社は1社と記載されています。Honda Cars各社の多くは地場資本の独立した販売会社で、給与体系も人事制度も各社が決めています。有価証券報告書の平均年間給与はあくまで本田技研工業単体の数字で、Honda Cars社員の年収ではありません。求人に応募する際は、雇用主となる法人の正式名称を必ず確認してください。
ホンダの営業は四輪以外も担当しますか?
担当します。公式の職種紹介では、国内営業は二輪・四輪・ライフクリエーションの各分野を対象としています。ライフクリエーションは発電機、耕うん機、除雪機、芝刈機、船外機などを扱うパワープロダクツ事業を含む領域です。2026年3月期のHondaグループ販売台数は二輪2,210万1千台、四輪338万7千台、パワープロダクツ358万9千台で、台数では二輪が中心になります。ただし二輪の国内営業活動は主に子会社の株式会社ホンダモーターサイクルジャパンが担っていると注記されています。
未経験からホンダの営業に転職できますか?
メーカー本体の中途採用は職務経験を前提とした募集が中心のため、まったくの未経験からの採用は限定的です。一方、Honda Cars各社やホンダモビリティ各社の販売職は未経験可の求人が出ることがあります。この2つは応募先の法人が異なり、選考基準も待遇も別物です。メーカー本体を目指す場合は、法人営業や代理店営業の経験を積んでから挑戦する流れが現実的になります。応募前に、求人票の会社名と勤務地、想定年収を照らし合わせて判断してください。
ホンダの営業経験は転職市場で評価されますか?
評価されます。特に価値が認められやすいのは、販売会社や海外拠点という組織を通じて数字を作った経験です。代理店政策の設計、販売目標の配分、拠点の業績改善支援といった業務は、自動車部品メーカーや専門商社など間接販売の比重が大きい業界でそのまま通用します。連結総売上高に占める海外比率80%という環境で現地と折衝した経験も、グローバル展開中の企業では強みになります。職務経歴書では個人の販売実績よりも、動かした組織の数と成果を具体的な数字で示すほうが伝わります。
ホンダの営業経験を語るとき、二輪か四輪かパワープロダクツかを最初に明示すると、相手が市場規模と商流をすぐ理解できます。台数と海外比率を添えると、担当した事業の大きさが具体的に伝わります。
まとめ
ホンダの営業がきついと言われる理由は、労働時間ではなく事業構成と組織構造にあります。二輪2,210万1千台、四輪338万7千台、パワープロダクツ358万9千台という台数構成に加え、航空機まで抱える事業の幅が、営業の仕事を複雑にしています。
年収は出典の性質で読み分けが必要です。有価証券報告書の平均年間給与9,326千円は本田技研工業単体の全社平均、OpenWorkの営業職732万円は平均年齢34歳の口コミ集計値にあたります。
働き方は月間残業25.7時間、有給休暇消化率94.1%と落ち着いている一方、社員評価の総合スコアは3.25で、人材の長期育成2.5と人事評価の適正感2.7が低く出ています。
最も注意したいのは会社の違いです。本田技研工業株式会社の営業とHonda Cars各社の販売職は別の法人の別職種で、有価証券報告書の数字は後者には当てはまりません。
きついと感じたら、原因が事業なのか所属なのか職務なのかを切り分けてください。社内の異動で解決する場合もあり、転職を選ぶなら販売網を動かした経験を軸に整理すると選択肢が広がります。









