建設業の営業がきついと言われる最大の理由は、飛び込みやノルマの重さではありません。会社の点数と格付けで入れる工事が決まり、金額と工期の作り込み方まで法律で縛られているという、受注産業ならではの条件にあります。
令和8年3月末時点の建設業許可業者数は483,823業者で、ピークだった平成12年3月末から19.5%減っています(国土交通省 建設業許可業者数調査の結果について)。減ったとはいえ48万社が同じ市場で受注を奪い合う構図は変わっていません。
この記事ではゼネコン・サブコン・専門工事業といった建設工事の受注営業に絞り、公的統計と法令だけを根拠に、きつさの構造、年収の相場、仕事内容、他の営業との違い、向き不向き、対処法、転職先を整理します。1社の数字を職種全体の代表としては扱いません。
FOCUS AGENT:東田 尚起

株式会社リクルートにてHR領域に従事。
求人広告営業(indeed/リクナビnext)をメインに、転職エージェントとしても従事。
自ら立ち上げた就職系メディアの事業売却を経験し、転職支援と日系企業を中心に複数社のRPO業務も担う。
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株式会社CAREER FOCUS/東田尚起建設業の営業のきつさは、住宅や不動産の営業とは種類が違います。売る力より、原価と工期を読み切る力が問われる仕事です。
建設業の営業がきついと言われる理由


建設業の営業がきついと言われる背景には、4つの構造があります。受注資格が制度で決まること、業者数に対して案件が限られること、価格と工期の決め方が法律で縛られたこと、そして労働時間が他産業より長いことです。
どれも担当者個人の努力では動かせない部分に原因があります。順に見ていきます。
受注資格が制度で決まる構造
公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は、経営事項審査を必ず受けなければなりません。これは建設業法にもとづく審査で、経営状況と経営規模等評価を数値で評価するものです。
各発注機関は競争入札に参加しようとする建設業者の資格審査を行い、客観的事項と主観的事項の審査結果を点数化して順位付けと格付けをしています(国土交通省 経営事項審査及び総合評定値の請求について)。
つまり営業担当者がどれだけ発注者と関係を作っても、会社の点数が足りなければ入札にすら参加できません。個人の頑張りが届かない天井が、制度として存在します。
民間工事でも事情は似ています。発注者が設定する指名の条件や、設計事務所が作る入札参加者のリストに入れるかどうかが先に決まり、そこから先が営業の勝負になります。公共工事の入札契約制度の全体像は国土交通省 公共工事の入札契約制度にまとまっています。
48万社が同じ市場で競合する環境
令和8年3月末現在の建設業許可業者数は483,823業者です。ピーク時の平成12年3月末と比べると117,157業者、率にして19.5%減っています(国土交通省 建設業許可業者数調査の結果について)。
内訳を見ると、一般建設業の許可を持つ業者が457,617業者、特定建設業の許可を持つ業者が50,511業者です。個人と資本金3億円未満の法人だけで481,538業者にのぼり、全体の99.5%を占めます。
さらに、建設業許可は29業種に分かれており、1業種のみの許可で営業している業者が221,833業者と全体の45.9%を占めます。得意分野が重なる同規模の会社が、同じ発注者の前に並ぶ場面が日常的に起こります。
請負代金が500万円未満の工事、建築一式工事なら1,500万円未満の工事は許可がなくても請け負えます(国土交通省 建設業の許可とは)。小規模な工事ほど参入者が増え、価格競争が激しくなる理由がここにあります。
価格と工期に対する法規制の強化
建設業法と入契法は令和6年6月14日に改正法が公布されました。処遇改善、資材高騰による労務費へのしわ寄せ防止、働き方改革と生産性向上の3つが柱です。
この改正で、著しく低い労務費等による見積りの提出と見積り依頼が禁止され、原価割れ契約の禁止が受注者にも導入されました。著しく短い工期による契約締結も、受注者に対して禁止されています(国土交通省 建設業法・入契法改正について)。
判断の基準となる労務費に関する基準は、令和7年12月2日の中央建設業審議会で作成され、その実施が勧告されました(国土交通省 労務費に関する基準)。
営業の現場で何が変わるかというと、安く受ける、短工期で受けるという取り方そのものが法令違反になりうるということです。数字を詰める自由度が狭まった分、提案の中身で差をつける必要が出てきました。
労働時間と休日の取りにくさ
建設業は長時間労働の背景に業務の特性や取引慣行の課題があるとして、時間外労働の上限規制の適用が5年間猶予されていました。その猶予が終わり、令和6年4月から規制が適用されています。
上限は原則として月45時間、年360時間です。臨時的な特別の事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内で、限度時間を超えられるのは年6か月までとされています(厚生労働省 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制)。
| 区分 | 時間外労働の上限 |
|---|---|
| 原則 | 月45時間かつ年360時間 |
| 特別条項を結んだ場合 | 年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内、限度時間超は年6か月まで |
| 災害時の復旧及び復興の事業 | 単月100時間未満と2から6か月平均80時間以内の規制は適用されない |
実態としての負荷も数字に出ています。建設業の年間出勤日数は全産業と比べて11日多く、年間の総実労働時間は62時間長いという集計があります(国土交通省 不動産・建設経済局建設業課 資料)。
営業職はこの統計の対象区分そのものではありませんが、発注者の都合で打ち合わせが夕方以降に入り、現場が動く土曜に立ち会うという働き方は営業にも共通します。
残業の多さは会社ごとに大きく違います。面接では特別条項付きの36協定を結んでいるか、限度時間を超えた月が直近1年で何回あったかを聞いてください。数字で答えられない会社は、労働時間の管理そのものが弱い可能性があります。



きつさの正体は根性論ではありません。制度と市場構造が、営業の打ち手をあらかじめ狭めている点にあります。
建設業の営業の年収の相場


先に結論を書きます。建設業の営業という職種区分の平均年収を示した公的統計は存在しません。したがって相場は、隣接する職種の求人統計と、産業としての建設業の賃金統計を突き合わせて幅で読むことになります。
ここでは出典と対象範囲を明示したうえで、3つの角度から整理します。
公的統計に建設営業という区分がない前提
厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、産業別と職種別の両方で賃金を集計しています。ただし職種の区分に建設業の営業という項目はありません。
国税庁の民間給与実態統計調査も業種別の集計で、職種までは分けていません。建設業の営業だけを取り出した公的な平均値は、現時点で公表されていないというのが正確な説明です。
比較の土台として、給与所得者全体の平均給与は478万円、正社員は545万円、正社員以外は206万円です(国税庁 令和6年分民間給与実態統計調査)。この数字が世間水準の目安になります。
なお、大手ゼネコン1社の有価証券報告書に載る平均年収を建設業の営業の相場として扱うのは適切ではありません。全社平均には設計職も技術職も管理部門も含まれ、会社規模によって水準がまったく違うためです。
求人統計から読む営業職の水準
求人票から算出された職種別の給与データを見ると、建設業の営業に近い区分として法人営業があります。
求人ボックスの集計によると、法人営業の平均年収は498万円です。正社員の給与幅は337万円から970万円と広く、人数が多いのは416万円から495万円の層になります(求人ボックス 法人営業の年収)。
営業職全体では444万円で、給与幅は349万円から1,073万円です(求人ボックス 営業の年収)。建設業で近い職種である施工管理は494万円、土木施工管理は496万円という水準です。
| 職種区分 | 平均年収 | 給与幅 |
|---|---|---|
| 法人営業 | 498万円 | 337万円から970万円 |
| 営業職全体 | 444万円 | 349万円から1,073万円 |
| 施工管理 | 494万円 | 345万円から913万円 |
| 土木施工管理 | 496万円 | 300万円から828万円 |
いずれも求人票の提示額を集計した数字で、在籍者の実際の支給額ではありません。出典は求人ボックス 法人営業の年収、求人ボックス 営業の年収、求人ボックス 施工管理の年収、求人ボックス 土木施工管理の年収です。
地域差も小さくありません。法人営業では東京都が550万円、最も低い鳥取県が367万円で、その差は183万円にのぼります。
年齢階級別に見た建設業の賃金
産業としての建設業の賃金を見ると、年齢による伸び方が把握できます。賃金構造基本統計調査の所定内給与額は、建設業の年齢計で36万6,300円です。
産業計の34万1,000円を上回っており、前年からは3.9%増えています(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査)。これは営業職に限った数字ではなく、建設業で働く一般労働者全体の集計です。
| 年齢階級 | 建設業の所定内給与額 |
|---|---|
| 20歳から24歳 | 25万500円 |
| 25歳から29歳 | 29万2,800円 |
| 30歳から34歳 | 33万900円 |
| 35歳から39歳 | 36万1,900円 |
| 40歳から44歳 | 38万500円 |
| 45歳から49歳 | 39万7,300円 |
| 50歳から54歳 | 42万9,800円 |
| 55歳から59歳 | 44万7,200円 |
20歳代前半から50歳代後半にかけて、所定内給与額は約1.8倍になります。建設業は勤続と経験で積み上がる賃金カーブを持つ産業だといえます。
一方で、建設業の生産労働者の年収は432万円、全産業の非正規を除いた年収は508万円という比較もあります。生産労働者とは建設現場で直接建設作業に従事する労働者を指すため、営業職とは対象が異なる点に注意してください。
建設業の営業は受注額に連動した手当を設ける会社があります。提示された年収を固定給、賞与、受注連動分の3つに分けて聞いてください。合計額だけを並べて比べると、受注が伸びなかった年の実額を見誤ります。
建設業の営業の仕事内容と1日の流れ


建設業の営業は、商品を持って回る仕事ではありません。工事という一件限りの生産物を、着工前に金額と工期の形で約束してくる仕事です。
業務は大きく、案件情報の収集、見積と入札、着工後の窓口の3つに分かれます。
案件情報の収集と発注者への接近
最初の仕事は、まだ形になっていない工事を探すことです。官公庁が公表する発注見通し、設計事務所やコンサルタントの動き、既存顧客の設備更新計画などが情報源になります。
設計が固まる前に関与できるかどうかが受注確率を大きく左右します。図面ができてから入札で戦うと、価格以外の差がつきにくくなるためです。
このため建設業の営業は、案件になる何年も前から発注者や設計者との接点を保ち続けます。短期の訪問件数では成果が測りにくい理由がここにあります。
見積と入札での金額と工期の決定
案件が具体化すると、積算部門と組んで見積を作ります。数量を拾い、労務費と資材費と外注費を積み上げ、自社の利益と現場管理費を乗せて金額を出します。
ここで営業が決めるのは金額だけではありません。工期の長さ、支払条件、設計変更が出たときの扱いまでを契約書に落とし込む必要があります。
令和6年改正の建設業法では、資材高騰など請負代金に影響を及ぼす事象の情報を受注者から注文者に提供することが義務化され、資材が高騰した際の請負代金の変更方法を契約書記載事項として明確化することとされました(国土交通省 建設業法・入契法改正について)。
契約前の説明責任が重くなった分、見積段階での確認項目が増えています。
着工後の窓口としての役割
契約を取れば終わりではありません。着工後も発注者との窓口は営業が担うのが一般的です。
設計変更、追加工事、近隣対応、工程の遅れといった出来事のたびに、現場所長と発注者の間に立って条件を詰め直します。追加分の金額を書面で合意しないまま工事が進むと、竣工時に回収できなくなります。
1日の流れとしては、次のような組み立てが典型です。
- 午前は社内で見積の詰めと工程の確認
- 昼前後に発注者や設計事務所を訪問
- 夕方に現場へ寄って所長と情報共有
- 夜に見積書と報告書の作成
- 翌日の協議に備えた資料の準備
発注者の都合で打ち合わせが夕方以降になりやすく、事務作業が後ろに回ることが、拘束時間が伸びる一因になっています。
現場で発注者から依頼された追加工事を、金額を決めないまま先に着手すると回収が難しくなります。小さな変更でも、その日のうちに数量と金額と工期への影響をメールで送り、相手の返信を残してください。



契約は折り返し地点です。竣工までの数か月から数年、発注者と現場の間に立ち続けるのが建設業の営業の実像です。
建設業の営業と他の営業手法の違い


建設業の営業は、同じ営業職でも扱う対象と決め方が大きく異なります。住宅や不動産の営業と混同されやすいため、違いを整理しておきます。
分かれ目は、売るものが既に存在するかどうかと、誰が意思決定するかの2点です。
住宅営業や不動産営業との違い
住宅営業やハウスメーカーの営業は、個人が相手です。買う人の生活設計や資金計画に踏み込み、最終的にはその家族の意思決定を支える仕事になります。
建設業の受注営業は、相手が法人や官公庁です。決裁は複数の部署と稟議を経て動き、担当者の感情だけでは契約に至りません。
扱う金額の桁も違い、1件の契約で会社の年間売上の相当部分を占めることもあります。個人向けの営業と比べたいときは住宅営業がきつい理由やハウスメーカー営業がきつい理由、既存住宅を扱うリフォーム営業がきつい理由、物件そのものを扱う不動産営業への転職もあわせて確認してください。
| 比較軸 | 建設業の営業 | 住宅・不動産営業 | メーカー営業 |
|---|---|---|---|
| 売るもの | まだ存在しない工事 | 建物や物件 | 既にある製品 |
| 主な相手 | 法人と官公庁 | 個人と世帯 | 法人の購買部門 |
| 価格の決め方 | 一件ごとに原価から積算 | 商品ごとの価格帯と値引き | 価格表と数量割引 |
| 受注までの期間 | 数か月から数年 | 数週間から数か月 | 数日から数か月 |
| 契約後の関与 | 竣工まで窓口を継続 | 引き渡しまで | 納品まで |
元請の営業と下請の営業の違い
建設業は重層的な下請構造で成り立っています。発注者から直接受注する元請と、元請から工事の一部を請け負う下請では、営業の相手も評価軸も変わります。
元請の営業は発注者と向き合い、工事全体の金額と工期を組み立てます。サブコンや専門工事業の営業は元請のゼネコンが相手になり、自社の施工能力と単価で選ばれることを狙います。
許可制度もこの構造を反映しています。元請として1件5,000万円以上、建築工事業なら8,000万円以上の下請契約を結ぶ場合は特定建設業の許可が必要で、それ以外は一般建設業の許可で足ります(国土交通省 建設業の許可とは)。
この金額は令和7年2月1日に引き上げられました。自社が元請側なのか下請側なのかで、営業が背負う責任の重さはまったく違います。
公共工事と民間工事の違い
同じ建設業でも、公共工事中心の会社と民間工事中心の会社では働き方が変わります。これは印象論ではなく、調査で数字が出ています。
国土交通省の調査では、4週8休以上を確保できている割合は、公共工事の受注がほとんどの企業で技術者33.8%、技能者38.0%でした。一方で民間工事の受注がほとんどの企業では技術者11.1%、技能者15.1%にとどまります(国土交通省 不動産・建設経済局建設業課 資料)。
| 受注の中心 | 技術者の4週8休以上 | 技能者の4週8休以上 |
|---|---|---|
| 全体 | 21.2% | 25.8% |
| 公共工事がほとんど | 33.8% | 38.0% |
| 民間工事がほとんど | 11.1% | 15.1% |
同じ建設業でも、取ってくる案件の種類によって休日の取りやすさが3倍前後変わるということです。公共工事の発注者は週休2日の確保を含めた工期設定に取り組んでおり、その差が数字に表れています。
ただし公共工事には経営事項審査と入札参加資格という関門があります。会社の点数が低ければ、そもそも狙える工事の規模が限られます。
求人票に売上高が書かれていても、公共工事と民間工事の比率までは載っていないことがほとんどです。面接で直近3年の受注比率を聞くと、休日の取りやすさと繁忙の波をかなり正確に見積もれます。
建設業の営業に向いている人と向いていない人


建設業の営業で成果を出す人は、話がうまい人ではありません。原価と工期という2つの数字を、自分で検算できる人です。
向き不向きは性格よりも、仕事の進め方の癖に現れます。
向いている人の特徴
第一に、数字を自分で追える人です。積算部門が出した見積を鵜呑みにせず、数量と単価の根拠をたどって発注者に説明できる人は信頼されます。
第二に、長期戦を待てる人です。案件の情報収集から受注まで数年かかることがあり、その間の活動は数字になりません。
第三に、書面で残す習慣がある人です。口頭の合意が後で覆る場面が多く、その場で記録に残せるかどうかが利益を左右します。
- 見積の数量と単価の根拠を自分で説明できる
- 成果が出ない期間も活動量を保てる
- 合意した内容をその日のうちに書面化する
- 現場の所長や職長と対等に話せる
- 法令や約款の条文を面倒がらずに読む
この5つに共通するのは、感覚ではなく根拠で仕事を進める姿勢です。建設業の営業が扱う金額の大きさを考えれば、当然の要求ともいえます。
向いていない人の特徴
逆に苦しくなりやすいのは、短期の成果で自分を評価したい人です。月次の受注件数だけを見ていると、建設業の営業は手応えがないまま時間が過ぎます。
値引きで決めたい人も合いません。改正建設業法により、著しく低い労務費等による見積りの提出と、原価割れの契約締結が禁止されています。
現場に関心が持てない人も続きにくい傾向があります。着工後の協議で判断を求められる場面が多く、施工の流れを理解していないと発注者にも所長にも頼られません。
未経験から入る場合の判断軸
未経験の採用は珍しくありません。建設業の入職率は11.7%で離職率の10.0%を上回っており、人が入ってくる産業ではあります。
産業計の入職率14.8%、離職率14.2%と比べると、建設業は出入りが少なく定着しやすい産業という読み方もできます(厚生労働省 令和6年雇用動向調査)。
ただし建設業就業者は483万人まで減り、55歳以上が36.6%、29歳以下が11.6%という年齢構成です。若手が入れば早く任される一方、教えられる人が少ないという事情もあります。
未経験からの転職先を比較したい場合は、未経験におすすめの転職エージェントや営業がきつい業界ランキングを参考にしてください。
面接の段階で、実際に提出した見積書の様式を見せてもらえないか打診してください。数量拾いをどこまで営業が担うのか、積算部門との分担はどうなっているのかが一目で分かります。断られた場合はその理由も判断材料になります。



建設業の営業に必要なのは度胸ではなく、数字と書面に向き合う根気です。ここが合えば未経験でも十分に戦えます。
建設業の営業がきついと感じたときの対処法


きついと感じたときに、いきなり辞める判断をする必要はありません。扱う案件の種類、自分の専門性、会社の実力という3つを順に見直すと、打つ手が残っている場合が多いからです。
転職はその余地を潰したあとの選択肢になります。
扱う案件の種類を変える
最初に検討したいのは、社内で担当する案件の種類を変えることです。民間工事中心の部署から公共工事中心の部署へ移れるなら、休日の取りやすさは数字のうえでも変わります。
先に示したとおり、4週8休以上を確保できている技術者の割合は、公共工事中心の企業で33.8%、民間工事中心の企業で11.1%でした。
また、受注の規模を追うのをやめて、改修や維持管理の案件に軸足を移すという選択もあります。金額は小さくなりますが、繰り返しの受注が積み上がり、発注者との関係も安定しやすくなります。
資格で専門性の軸を作る
建設業の営業は、技術的な裏づけがあると発注者との会話の質が変わります。施工管理技士や建築士を取得すると、見積の説明に説得力が生まれます。
資格は転職市場でも評価されます。求人統計での施工管理の平均年収は494万円、土木施工管理は496万円で、営業職全体の444万円を上回る水準です。
経営事項審査では技術力が評価項目に含まれるため、有資格者を増やすことは会社の点数にも直結します。自分の勉強が会社の受注資格にもつながる点が、この業界の特徴です。
会社の実力を数字で確認する
同じ建設業でも、会社によって営業のしんどさはまったく違います。判断材料として使えるのが経営事項審査の結果です。
経営事項審査は経営状況と経営規模等評価を数値で示すもので、総合評定値の請求も制度化されています(国土交通省 経営事項審査及び総合評定値の請求について)。自社や志望先の点数と、狙っている工事のランクが釣り合っているかを確認してください。
点数に対して背伸びした工事を追い続けている会社では、営業はいつまでも取れない案件を追わされます。逆に点数に余裕がある会社なら、同じ努力でも受注につながりやすくなります。
30代で建設業界の中を移りたい場合は30代におすすめの転職エージェント、現場側へ移りたい場合は施工管理におすすめの転職エージェントが参考になります。
直近1年で自分が関与した案件を、受注できたものと失注したものに分けて理由を書き出してください。金額で負けたのか、点数で入れなかったのか、提案内容で負けたのかが見えます。原因が会社側にあるなら、転職で解決する可能性が高いと判断できます。
建設業の営業の経験が活きる転職先


建設業の営業で身につくのは、見積を読む力と工期を読む力です。この2つは建設業のどの持ち場でも通用します。
代表的な移り先を2つの方向に分けて整理します。
現場側と売る側への移動
最も近いのは施工管理です。原価と工程の感覚がそのまま活き、営業時代に組んだ見積を自分で実行する立場になります。
建材メーカーや設備メーカーの営業も候補です。現場を知っている提案は、ゼネコンや専門工事業への売り込みで説得力を持ちます。
求人統計では施工管理が494万円、土木施工管理が496万円という水準で、営業職全体の444万円を上回ります。現場側へ移ることが年収の後退を意味するとは限りません。
発注者側と支援側への移動
もう一つの方向が、買う側へ回ることです。事業会社の建設部門や施設管理部門では、提出された見積の妥当性を判断できる人材が求められます。
鉄道や電力などの設備を持つ企業、商業施設やホテルを運営する企業には、工事を発注する部署があります。受注側で見積を作ってきた経験は、そのまま発注側の武器になります。
不動産開発や建設コンサルタントも選択肢です。いずれも工事費を読めることが前提になる仕事で、建設業の営業経験が評価されます。
この3つは求められるものが違います。施工管理なら資格と工程管理、メーカー営業なら製品知識、発注者側なら契約と予算管理の理解が問われます。
建設業の営業の経験は、担当した工事の種類、請負金額の規模、工期の長さ、元請か下請かを書いて初めて伝わります。件数だけを並べても、どの程度の案件を扱ってきたかが読み手に伝わりません。



見積と工期を読める人材は、受注側にも発注側にも足りていません。営業以外への横移動も現実的な選択肢になります。
建設業の営業に関するよくある質問
建設業の営業への転職を検討する人から実際に多い質問を、公的統計と法令の内容にもとづいて整理します。
建設業の営業は本当にきついのでしょうか?
きつさの中身が他の営業職と異なります。公共工事では経営事項審査で会社の点数と格付けが決まるため、担当者がどれだけ動いても参加できない入札があります。令和8年3月末時点で建設業許可業者数は483,823業者あり、同規模の会社が同じ発注者の前に並びます。労働時間の面でも、建設業の年間出勤日数は全産業より11日多く、総実労働時間は62時間長いという集計があります。一方で建設業の離職率は10.0%と産業計の14.2%を下回っており、業界全体が人を失い続けているわけではありません。
建設業の営業の年収はどのくらいですか?
建設業の営業という職種区分の平均年収を示した公的統計は存在しません。近い区分として、求人ボックスが求人票から算出した法人営業の平均年収は498万円で、給与幅は337万円から970万円です。営業職全体では444万円となっています。産業としての建設業を見ると、賃金構造基本統計調査の所定内給与額は年齢計で36万6,300円で、産業計の34万1,000円を上回ります。大手ゼネコン1社の有価証券報告書に載る平均年収は、その会社の全社員の平均であり、建設業の営業の相場として扱うことはできません。
2024年4月からの残業規制で働き方は変わりましたか?
建設業は長時間労働の背景に業務の特性や取引慣行の課題があるとして、時間外労働の上限規制の適用が5年間猶予されていました。その猶予が終わり、令和6年4月から規制が適用されています。上限は原則として月45時間かつ年360時間で、特別条項を結んだ場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内です。災害時における復旧及び復興の事業に限り、単月100時間未満と2から6か月平均80時間以内の規制は適用されません。規制が現場に効くためには工期の確保が前提になるため、営業が取ってくる条件の重要性が以前より高まりました。
建設業の営業に資格は必要ですか?
営業として働くこと自体に法令上の必須資格はありません。ただし建設業の許可は建設業法第3条にもとづく制度で、土木一式工事と建築一式工事のほか27の専門工事を加えた29業種に分かれています。許可の有効期間は5年で、5年ごとに更新しなければ失効します。請負代金が500万円未満の工事、建築一式工事なら1,500万円未満または木造住宅で延べ面積150平方メートル未満の工事は、許可がなくても請け負えます。この制度を理解していないと、自社が受けられる工事の範囲すら説明できません。施工管理技士や建築士を持っていると、見積の説明に技術的な裏づけを付けられます。
未経験から建設業の営業に転職できますか?
未経験の採用を行う会社は多くあります。建設業の入職率は11.7%で離職率の10.0%を上回っており、人が入ってくる産業です。判断の軸は研修制度よりも、その会社が扱う案件の種類になります。公共工事の受注がほとんどの企業では4週8休以上を確保できている技術者が33.8%、民間工事の受注がほとんどの企業では11.1%で、働き方に大きな差があります。面接では直近3年の公共工事と民間工事の受注比率、特定建設業と一般建設業のどちらの許可を持っているかを確認してください。
受注は公共と民間、許可は一般と特定、立場は元請と下請というように、必ず内訳で聞いてください。合計の売上高だけを提示する会社は、働き方に直結する部分を見せていない可能性があります。
まとめ
建設業の営業がきついと言われる理由は、ノルマの重さではありません。公共工事では経営事項審査で会社の点数と格付けが決まり、担当者の努力では参加できない入札が存在します。
市場の密度も要因です。令和8年3月末時点の建設業許可業者数は483,823業者で、個人と資本金3億円未満の法人が99.5%を占めます。1業種のみの許可で営業する業者が45.9%にのぼり、似た規模の会社が同じ案件を奪い合います。
令和6年に公布された改正建設業法により、著しく低い労務費等による見積りの提出と、原価割れの契約締結、著しく短い工期での契約締結が受注者にも禁止されました。安く短く受けるという取り方が、法令上取れなくなっています。
労働時間については、令和6年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。それでも建設業の年間出勤日数は全産業より11日多く、総実労働時間は62時間長いままです。休日の取りやすさは公共工事中心か民間工事中心かで3倍前後変わります。
年収は、建設業の営業という区分の公的統計がないため幅で読むしかありません。求人統計では法人営業が498万円、営業職全体が444万円で、建設業の所定内給与額は年齢計で36万6,300円です。きついと感じたときは、扱う案件の種類、資格による専門性、会社の点数の順に見直してから、転職を判断してください。









