新規営業がきつい理由は?年収の相場と向いている人の特徴を解説

新規営業がきついと言われる最大の理由は、断られることが前提に組み込まれた仕事だという点にあります。取引のない相手に自分から接点を作りにいく以上、反応が返ってこない時間のほうが長くなります。

新規営業は、これまで取引のない見込み顧客に働きかけて新しい顧客を獲得する活動を指し、新規開拓営業とも呼ばれます(Salesforce 新規開拓とは)。テレアポ、飛び込み、メールやフォームからの連絡、展示会など、接点の作り方は複数あります。

この記事では、公的統計と法令で確認できる事実だけを使い、新規営業のきつさがどこから生まれるのか、年収の相場をどう読むのか、他の営業手法と何が違うのかを整理します。

解説者

FOCUS AGENT:東田 尚起

FOCUS AGENT なおき

株式会社リクルートにてHR領域に従事。
求人広告営業(indeed/リクナビnext)をメインに、転職エージェントとしても従事。

自ら立ち上げた就職系メディアの事業売却を経験し、転職支援と日系企業を中心に複数社のRPO業務も担う。

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株式会社CAREER FOCUS/東田尚起

新規営業のつらさは、努力の量ではなく努力の向け先で決まります。同じ活動量でも、当たる相手を変えただけで数字が動くことは珍しくありません。

目次

新規営業がきついと言われる理由

新規営業がきついと言われる理由

新規営業のきつさは、性格や根性の問題として語られがちです。実際には、この仕事の設計そのものに負荷の出どころが4つあります。

断られる前提の活動量、成果がゼロになりうる期間、リストの質が結果を先に決めてしまう構造、そして顧客との関係をゼロから作り直し続ける立場の4つです。

断られる前提の活動量

新規営業では、1件の受注の裏側に大量の断りが積み上がります。行動量を確保しないと確率が働かないため、接触件数そのものが目標に置かれる職場が一般的です。

この設計自体は合理的です。問題は、日々の大半が断られた記録で埋まるという事実を、担当者が毎日引き受ける形になることです。

断られた件数は努力の証明にもなりますが、同時に自己評価を削ります。とくに入社直後は、成功例を1つも持たないまま断りだけが蓄積する期間が続きます。

架電を中心にした活動の具体的な難しさは、受付突破や切り返しの設計まで含めて法人営業テレアポの記事で扱っています。新規営業はテレアポを含む複数手法の総称であり、手法ごとの詳細はそちらが詳しくなります。

成果がゼロになりうる期間

新規営業がほかの営業職と決定的に違うのは、既存顧客からの売上という下支えを持たない点です。今月の数字は、今月新しく作った取引だけで構成されます。

ルート営業であれば、既存顧客の継続分が一定量の売上を自動的に生みます。新規営業にはその土台がありません。

結果として、月次で数字がゼロになる月が現実に発生します。商材の単価が高く商談期間が長い領域ほど、この空白は長くなります。

この期間に効いてくるのが給与の構成です。固定給の比率が低い職場では、成果ゼロの月が生活の不安に直結します。

リストの質が結果を先に決める構造

同じトークで同じ件数を当たっても、成果は担当者によって大きく分かれます。差を生んでいるのは話し方より、誰に当たるかを決めた前工程であることが多いためです。

自社の商材に予算と課題の両方がある相手、決裁者に近い部署、導入時期が近い企業。この3つの条件がそろわないリストは、どれだけ丁寧に当たっても商談になりません。

ところが、リストを作るのは担当者ではなくマーケティング部門や上長であることが多いのが実情です。前工程の質が悪いまま活動量だけを求められると、努力と結果の因果関係が切れます。

  • 当たる相手の選定基準が言語化されていない
  • すでに他社が導入済みの企業が混ざっている
  • 窓口の部署が決裁に関われない立場である
  • 同じ企業に複数の担当者が重複して連絡している

この4つに共通するのは、原因が担当者の外側にあることです。だからこそ、数字が出ない理由を自分の内側だけで探すと出口がなくなります。

顧客との関係をゼロから作る立場

新規営業は、相手が自社を知らない状態から始まります。まず警戒を解く工程が毎回必要になるという点が、既存顧客を回る仕事との大きな違いです。

提案の中身を聞いてもらう前に、名乗り、用件を伝え、時間をもらう理由を説明する段階があります。ここで落ちる件数が最も多くなります。

関係が積み上がらないまま次の相手に移り続けるため、感謝される機会も限られます。顧客との長期的な関係を重視する人にとっては、ルート営業の記事で扱っている働き方のほうが合うこともあります。

ワンポイントアドバイス
きつさの出どころを切り分ける

同じきついでも、活動量が重いのか、成果がゼロの期間が怖いのか、リストが合っていないのかで打ち手は変わります。直近3か月の接触件数と商談化率と受注率を書き出し、どこで落ちているかを先に特定してください。

新規営業の年収の相場

新規営業の年収の読み方

新規営業の年収は、職種名ではなく勤め先の企業規模と給与の構成から読むほうが実態に近くなります。公的統計に新規営業という職種区分が存在しないためです。

まず物差しを置きます。給与所得者全体の平均給与は478万円で、正社員は545万円、正社員以外は206万円となっています(国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査)。

職種として集計されない年収

厚生労働省の賃金構造基本統計調査にも、国税庁の民間給与実態統計調査にも、新規営業という職種の集計はありません。新規営業は雇用契約上の職種名ではなく、顧客との接点の作り方を指す呼び名だからです。

求人票では法人営業、ソリューション営業、リクルーティングアドバイザーといった職種名で募集され、その業務内容の説明として新規開拓中心と書かれる形が一般的です。

この構造を知らずに新規営業の平均年収という数字だけを探すと、根拠のはっきりしない数値にたどり着きます。同じ新規営業でも、扱う商材と勤め先の規模が違えば水準は変わります。

企業規模別の賃金水準

代わりに使えるのが企業規模別のデータです。令和7年の賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の賃金は男女計で大企業38.51万円、中企業32.62万円、小企業30.56万円となっています(厚生労働省 企業規模別にみた賃金)。

ここでいう賃金は6月分の所定内給与額で、残業代や賞与を含みません。年収そのものではありませんが、規模による水準差を比べる物差しとしては使えます。

企業規模賃金(月額)大企業との差
大企業38.51万円基準
中企業32.62万円-5.89万円
小企業30.56万円-7.95万円

対象は一般労働者の所定内給与額で、新規営業だけを抜き出した数字ではありません。全体の平均は男女計で34.06万円、男性37.34万円、女性28.59万円です(厚生労働省 性別にみた賃金)。

新規営業の求人は、人材、広告、IT、保険、不動産など、規模の幅が広い産業に多く分布します。同じ職務内容でも、企業規模が変われば固定給の出発点が変わる点は押さえておきたいところです。

株式会社CAREER FOCUS/東田尚起

求人票に新規開拓中心と書かれていても、給与の水準を決めているのは営業手法ではありません。扱う商材と会社の規模のほうが、はるかに大きく効いてきます。

インセンティブの比重と年収の振れ幅

新規営業は、ルート営業に比べて成績が給与に結び付きやすい職種とされています(マイナビ転職エージェント ルート営業とは)。裏返すと、同じ会社の同じ職種でも年収の上下の幅が大きくなるということです。

インセンティブの比重が高い職場では、受注がない月の手取りがそのまま下がります。先に触れたとおり、新規営業には既存顧客の下支えがありません。

求人票を見るときは、想定年収の上限ではなく固定給がいくらかを先に確認してください。モデル年収の内訳が書かれていない求人は、面接で聞いておくほうが安全です。

年齢による水準の違いも参考になります。同じ調査では、賃金は20代前半が24.28万円、30代前半が31.23万円、40代前半が36.43万円と上がっていきます(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査の概況)。

ワンポイントアドバイス
求人票で確認する3点

固定給の額、インセンティブの発生条件、リストの供給元の3つを面接で確認してください。とくにリストを会社が用意するのか自分で作るのかは、入社後の成果の出方を大きく左右します。

新規営業の仕事内容と1日の流れ

新規営業の仕事内容と1日の流れ

新規営業の仕事内容は、電話をかけることや訪問することだけではありません。当たる相手を決める作業、初回接触、商談、そして断られた理由を記録する作業までが業務範囲に入ります。

このうち成果を左右するのは、実は最初と最後の工程です。誰に当たるかを決める前工程と、なぜ落ちたかを残す後工程が弱いと、活動量が積み上がっても成果が伸びません。

リスト作成から初回接触までの業務範囲

業務の起点はリストです。自社の商材に予算と課題がある相手を絞り込む作業から新規営業は始まります。

絞り込んだ相手への接点の作り方は複数あります。電話、メール、問い合わせフォーム、手紙、展示会での名刺交換、紹介依頼などが代表的です。

どの手段を使うかは商材と相手で変わります。単価の低い商材で決裁者が現場に近い場合は電話が有効で、大企業の決裁者に届かせたい場合は紹介や展示会が現実的になります。

  • 当たる相手の条件を決めてリストを作る
  • 電話やメール、フォームから初回の接点を作る
  • 関心のあった相手と初回の商談を設定する
  • 課題を聞き取り、提案の方向性を決める
  • 見積もりと条件のすり合わせから受注まで進める
  • 受注後の導入や納品を担当部門へ引き継ぐ

この6工程のうち、新規営業に固有なのは最初の2つです。商談から先の進め方は、反響営業でもルート営業でも大きくは変わりません。

新規営業の1日の流れ

1日の使い方は、接触の時間と商談の時間をどう分けるかで決まります。架電や訪問は相手の都合のよい時間帯に集中するため、時間割は自然と型になります。

時間帯主な業務意識する点
始業直後リストの確認と当日の架電先の整理当たる順番を決めてから動く
午前中電話やメールでの初回接触つながりやすい時間帯に集中させる
昼過ぎから夕方初回訪問とオンライン商談課題の聞き取りを優先する
夕方追加の架電と見積もりの作成当日中の返信を残さない
終業前案件管理への記録と翌日の準備断られた理由を必ず残す

この流れは商材によって変わります。個人向けの商材では夜間や休日に接触が偏り、法人向けでは平日日中に集中します。

休日対応が業務に組み込まれやすいのは、個人を相手にする商材の特徴です。業界ごとの事情は不動産営業の記事や保険営業の記事で整理しています。

商談化後の業務と引き継ぎ

商談が始まってからの仕事は、提案の設計と社内調整が中心になります。相手の意思決定の順番を先に聞き出せるかが、受注までの期間を決めます。

決裁者、予算の時期、他社との比較状況の3つは、初回の商談で聞いておく項目です。ここを外すと、何度訪問しても結論が出ないまま案件が滞留します。

受注後の扱いは会社によって分かれます。導入や納品まで担当が持つ会社もあれば、カスタマーサクセスやルート担当へ引き継ぐ会社もあります。

引き継ぐ形の会社では、新規営業は常に新しい相手と向き合い続けることになります。安定した関係を築く時間が取れない点は、事前に確認しておきたいところです。

ワンポイントアドバイス
初回商談で必ず聞く3項目

決裁者は誰か、予算はいつ確保されるか、他社と比較しているか。この3つを初回で聞けていない案件は、後から確認しようとすると相手の熱が下がっています。商談の冒頭で聞く癖をつけてください。

新規営業と他の営業手法の違い

新規営業と他の営業手法の違い

営業職の求人票には、新規開拓、反響、ルート、インサイドセールスといった言葉が並びます。これらは扱う商品の違いではなく、顧客とどこで出会うかの違いです。

同じ営業でも、入口が違えばきつさの種類が変わります。転職先を選ぶときは、この入口の違いを先に確認しておくと後悔が減ります。

営業手法顧客との出会い方きつさの中心成果の振れ幅
新規営業自分から接点を作る断られる件数と成果ゼロの期間大きい
反響営業顧客からの問い合わせ成約して当然という前提中程度
ルート営業既存顧客への定期訪問関係維持と単価の伸びにくさ小さい
インサイドセールス非対面での初回接触件数管理と商談化率の評価中程度

この4つは対立するものではなく、1つの会社の中で分業されていることもあります。次のH3では、新規営業から見たときのそれぞれの違いを具体的に見ていきます。

反響営業との違い

反響営業は、広告やWebサイトを見た人からの問い合わせに応じて提案する手法です。新規営業とは顧客から来るか、自分から行くかという入口で正反対の位置にあります。

反響営業では関心のある相手に会えるため、初回接触の負荷は軽くなります。その代わり、決まらなかった理由を説明しにくいという別の重さが生まれます。

商談数を自分の行動量で増やせるのは新規営業の側です。反響営業は広告の出方に商談数が左右されるため、行動量で挽回できません。詳しくは反響営業の記事で整理しています。

ルート営業との違い

ルート営業は、すでに取引のある既存顧客を中心に回る営業です。飛び込みやテレアポを行わない点が新規営業との大きな違いになります(マイナビ転職エージェント ルート営業とは)。

給与の面では、新規営業のほうが成績が給与に結び付きやすいとされる一方、ルート営業は安定的な給与を得やすいという傾向があります。

どちらがよいかは、何を苦痛と感じるかで変わります。断られることが苦痛なら前者は向きませんし、同じ相手との関係維持が退屈なら後者は続きません。

インサイドセールスとの分業

インサイドセールスは、電話やメール、オンライン会議を使って非対面で見込み顧客に接触する職種です。新規営業の前工程だけを切り出して専門化した形と考えると整理しやすくなります。

この分業が進んだ会社では、接触までをインサイドセールスが担い、商談以降をフィールドセールスが担う体制になります。担当者ごとの負荷が下がる代わりに、評価指標も工程ごとに分かれます。

分業体制はIT関連やSaaSを扱う企業で広く採用されています。仕組みの実態はSaaS営業の記事やIT営業の記事で扱っています。

ワンポイントアドバイス
求人票の言葉を分解する

新規開拓という言葉だけでは、リストを自分で作るのか、インサイドセールスから渡されるのかが分かりません。面接では1日の架電件数ではなく、商談の供給元がどこかを聞いてください。

新規営業に向いている人と向いていない人

新規営業に向いている人と向いていない人

新規営業の適性は、明るさや押しの強さで判断されがちです。実際に続く人と続かない人を分けているのは、断られた結果をどう扱うかという習慣のほうです。

ここでは、向いている人の特徴と向いていない人の特徴を、性格ではなく行動の型として整理します。

向いている人の特徴

続く人に共通するのは、断られた事実を翌日に持ち込まない切り替えの早さです。感情を抑え込むのではなく、断られた理由を情報として処理してしまう人が長く残ります。

もう1つは、前工程を疑える姿勢です。成果が出ないときに自分のトークだけを反省するのではなく、当たる相手の選び方そのものを見直せる人は数字が戻ります。

  • 断られた理由を記録し、次のリストに反映できる
  • 成果ゼロの月があることを前提に生活を設計している
  • 相手の決裁の流れを聞き出すことに抵抗がない
  • 自分で仮説を立てて当たる相手を変えられる

この4つに共通するのは、結果を自分の外側の変数で説明し直す力です。精神論に寄せずに原因を分解できるかどうかが分かれ目になります。

向いていない人の特徴

逆に苦しくなりやすいのは、仕事を通じて感謝される実感を必要とする人です。新規営業では、相手から感謝される場面が訪れるまでに長い時間がかかります。

日々の大半は断りで埋まり、成果が出ても次の月にはまたゼロから始まります。積み上がっていく感覚を得にくい構造です。

また、収入の変動に強い不安を感じる人も慎重に考えたほうがよい領域です。インセンティブの比重が高い職場では、月ごとの手取りが動きます。

未経験から始める場合の適性

未経験から新規営業に入る場合、最初の数か月は成果がほとんど出ないと考えておくのが現実的です。最初の受注までの期間を耐えられる環境かどうかを先に確認してください。

確認すべきは研修の有無ではなく、成果が出るまでの評価の置き方です。入社半年間は接触件数で評価する会社と、初月から受注額で評価する会社では続けやすさが変わります。

未経験で営業職を検討する場合の進め方は、未経験向けの転職エージェントの記事で整理しています。業界ごとの負荷の違いは営業がきつい業界ランキングの記事も参考になります。

ワンポイントアドバイス
適性は性格ではなく習慣で測る

自分が向いているかを性格診断で判断しないでください。断られた翌日に同じ件数を当たれるか、落ちた理由を書き出す習慣があるか。この2つのほうが、実務の続けやすさを正確に予測します。

新規営業がきついと感じたときの対処法

新規営業がきついと感じたときの対処法

きついと感じたときに最初にやるべきことは、辞めるか続けるかを決めることではありません。どの工程で落ちているかを数字で特定することです。

新規営業の成果は、接触件数、商談化率、受注率の掛け算で決まります。どこが落ちているかによって、打つべき手はまったく変わります。

数字を工程で割って原因を特定する

まず直近3か月の数字を3段階に分けて書き出します。接触件数と商談化率と受注率のどこが落ちているかを見るためです。

接触件数が足りないなら、時間の使い方の問題です。事務作業や移動に時間を取られていないかを確認します。

商談化率が低いなら、当たる相手か初回の伝え方の問題です。受注率が低いなら、提案の内容か案件の見極めの問題になります。

株式会社CAREER FOCUS/東田尚起

数字を分けずにきついと言い続けると、打ち手が根性論に寄ってしまいます。3つに割るだけで、明日やることが具体的になります。

リストと当たり方を組み替える

商談化率が落ちている場合、最初に見直すのはトークではなくリストです。当たる相手を変えると同じ活動量でも数字が動くことがあります。

過去に商談化した企業の共通点を探してください。業種、規模、部署、問い合わせのきっかけの4点を並べると、当たるべき相手の輪郭が見えてきます。

接点の作り方も1つに固定しないほうが結果は安定します。電話で届かない相手にはフォームや手紙、紹介の依頼が有効な場合があります。

手法ごとの具体的な工夫は、架電については法人営業テレアポの記事で扱っています。

分業のある環境へ移る

工程を分解しても改善しない場合、原因が会社の体制にあることがあります。リストの供給と初回接触と商談を1人で抱える体制は、個人の工夫では限界が来ます。

インサイドセールスとフィールドセールスを分けている会社では、1人が担う工程が減ります。評価指標も工程に合わせて設計されるため、成果ゼロの月の扱いも変わります。

同じ新規営業でも、商材を変えるだけできつさの中身が変わります。年代別の動き方は30代向けの転職エージェントの記事で整理しています。

ワンポイントアドバイス
辞める前に確認する1点

今の会社の商談の供給元がどこかを確認してください。自分でリストから作っているなら、分業のある会社に移るだけで負荷が大きく変わります。職種を変える前に体制を変える選択肢があります。

新規営業の経験が活きる転職先

新規営業の経験が活きる転職先

新規営業の経験は、転職市場で評価されやすい部類に入ります。接点のない相手から商談を作った経験は、どの業界でも再現性のあるスキルとして読まれるためです。

ただし、評価されるのは断られ続けた期間の長さではありません。何を変えて数字を動かしたかを説明できるかどうかで、評価は分かれます。

評価されやすいスキル

面接で効くのは、接点をゼロから作った工程を自分の言葉で説明できることです。誰に、どの手段で、なぜ当たったかを語れる人は、商材が変わっても通用すると判断されます。

リストの設計、初回接触の組み立て、決裁者の見極めの3つは、職種を越えて持ち運べる技能です。受注件数だけを並べるより、この3つの判断基準を語るほうが伝わります。

  • 当たる相手を絞り込んだ基準と、その根拠
  • 初回接触で使った手段と、手段を変えた理由
  • 商談を前に進めるために確認していた項目
  • 失注の理由を分類し、次に反映した内容

この4つに共通するのは、結果ではなく判断を語っている点です。数字は会社の商材に左右されますが、判断の質は個人に帰属します。

転職先の選択肢

選択肢として現実的なのは、無形商材の法人営業、インサイドセールス、そして事業開発やアライアンスの3方向です。接点を作る力がそのまま職務内容になる領域を選ぶと、経験が目減りしません。

無形商材の法人営業は、課題を聞き出して提案を組み立てる工程が中心になります。新規開拓の経験があると、案件を自分で作れる人材として評価されます。

インサイドセールスは、リスト設計と初回接触に専門化した職種です。新規営業の前工程を得意としてきた人にとっては、負荷を減らしながら強みを活かせる選択肢になります。

業界を変える場合は、商材と決裁構造が近い領域を選ぶと立ち上がりが早くなります。IT領域を検討する場合はIT営業の記事が参考になります。

ワンポイントアドバイス
職務経歴書に書く順番

受注実績を先頭に書かず、当たる相手をどう決めたかを先に書いてください。新規営業の経験を評価する採用担当者が知りたいのは、数字そのものではなく数字を作った判断の中身です。

新規営業に関わる法規制

新規営業は、自分から接点を作りにいく以上、法律による制約を最も強く受ける営業手法です。ここを知らないまま指示どおりに動くと、担当者個人が矢面に立つことがあります。

関係するのは主に3つの法律です。特定商取引法、特定電子メール法、そして個人情報保護法です。

特定商取引法による勧誘の制限

個人を相手にした飛び込みや電話での勧誘は、特定商取引法の規制対象になります。訪問販売では、勧誘に先立って事業者名と勧誘目的であること、販売する商品の種類を告げる義務があります(消費者庁 特定商取引法ガイド 訪問販売)。

さらに、契約しない意思を示した相手への再勧誘は禁止されています。電話勧誘販売でも同じく、氏名等の明示義務と再勧誘の禁止が定められています(消費者庁 特定商取引法ガイド 電話勧誘販売)。

法律で決められた書面を受け取った日から8日以内であれば、消費者はクーリング・オフができます。個人向けの商材を扱う新規営業では、この期間内の解約が一定の割合で発生します。

一方で、営業のため、または営業として締結する取引は特定商取引法の適用から除外されています。法人向けの新規営業がこの規制の直接の対象になりにくいのは、この適用除外があるためです。

特定電子メール法とメール営業の条件

メールでの新規開拓には、特定電子メール法が関わります。広告や宣伝のために送るメールは原則として規制対象で、あらかじめ同意した相手にだけ送信できるオプトイン方式が採られています(総務省 迷惑メール対策)。

同意なしに送信できる例外もあります。取引関係にある相手、名刺などの書面でメールアドレスを通知した相手、自分のメールアドレスをインターネットで公表している相手が該当します(総務省 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント)。

ただし、インターネットで公表している相手が個人の場合は、営業を営む個人に限られます。公表と併せて広告宣伝メールを送らないよう求める旨が示されている場合も、同意なく送ることはできません。

送信時には、送信者の氏名または名称、受信拒否の通知ができる旨とその通知先、住所、苦情の受付先を表示する義務があります。同意を得た記録は、最後に送信した日から1か月間の保存が必要です。

個人情報保護法とリストの扱い

新規営業の起点であるリストは、多くの場合が個人情報にあたります。取得時に利用目的を特定し、本人に通知または公表することが求められます(個人情報保護委員会 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン)。

本人の同意なく第三者へ提供することも、原則として認められていません。他部署や関連会社と名刺情報を共有する行為も、取扱いの設計を誤ると問題になります。

外部から購入したリストを使う場合は、取得の経緯を確認する必要があります。出どころの説明ができないリストを渡されたときは、上長に確認してから使うのが安全です。

ワンポイントアドバイス
会社の体制を面接で確認する

面接で、メール営業の同意取得をどう運用しているか、リストの出どころを社内でどう管理しているかを聞いてください。答えが曖昧な会社は、法令対応の負担が担当者個人に降りてくる可能性があります。

新規営業に関するよくある質問

新規営業への転職を検討する人から寄せられることの多い質問を5つ取り上げます。いずれも求人票だけでは判断しにくい論点です。

ここでの答えは、公的統計と法令、求人サイトの職種解説で確認できる範囲に限っています。

新規営業は本当にきついのでしょうか?

活動量と成果の振れ幅という点では、営業職の中でも負荷の大きい側に入ります。既存顧客からの売上という下支えがないため、月次で成果がゼロになる期間が現実に発生するためです。

ただし、きつさの中身は会社の体制で大きく変わります。リストの供給をマーケティング部門やインサイドセールスが担う会社では、担当者が抱える工程が減ります。

固定給の比率も効いてきます。インセンティブの比重が高いほど、成果の出ない月の生活への影響が大きくなります。求人票では想定年収より固定給の額を先に確認してください。

新規営業の年収はどのくらいですか?

新規営業という職種区分は公的統計に存在しないため、職種としての平均値は確認できません。参考になるのは企業規模別の水準で、令和7年の一般労働者の賃金は大企業38.51万円、中企業32.62万円、小企業30.56万円です(厚生労働省 企業規模別にみた賃金)。

これは6月分の所定内給与額で、残業代や賞与を含みません。給与所得者全体の平均給与は478万円、正社員は545万円です(国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査)。

新規営業ではインセンティブの比重が高い求人が多いため、同じ職種でも実際の年収は上下に開きます。モデル年収ではなく、固定給と支給条件の両方を確認して判断してください。

未経験から新規営業に転職できますか?

新規営業は未経験者の募集が比較的多い職種です。前提となる業界知識より、断られる前提の活動を継続できるかどうかが採用時に見られます。

入社後の立ち上がりを左右するのは、最初の数か月の評価の置き方です。接触件数で評価する会社と、初月から受注額で評価する会社では続けやすさが変わります。

面接では研修制度の有無よりも、入社半年間をどの指標で評価するかを聞いてください。未経験からの進め方は未経験向けの転職エージェントの記事で整理しています。

新規営業と反響営業ではどちらがきついですか?

きつさの種類が違うため、どちらが上とは言えません。新規営業は接点を作る段階の負荷が重く、反響営業は成約して当然という前提の重さが中心になります。

自分の行動量で商談数を増やせるのは新規営業です。反響営業は商談数が広告の出方に左右されるため、行動量では挽回できません。

断られることが苦手なら反響営業、成果を自分の行動でコントロールしたいなら新規営業が向きます。詳しくは反響営業の記事で整理しています。

新規営業の離職率は高いのでしょうか?

新規営業という職種単位の離職率は公表されていません。産業単位では、令和6年の一般労働者の離職率はサービス業(他に分類されないもの)が19.0%、宿泊業・飲食サービス業が18.1%と高く、産業計は11.5%となっています(厚生労働省 令和6年雇用動向調査 産業別の入職と離職)。

新規営業の求人が多い産業では、不動産業・物品賃貸業が12.6%、卸売業・小売業が10.7%、情報通信業が9.8%です。産業計と大きく離れた水準ではありません。

職種ではなく産業の数字である点には注意が必要です。業界別の負荷の違いは営業がきつい業界ランキングの記事で扱っています。

ワンポイントアドバイス
質問は入社後の指標に寄せる

面接で聞くべきは離職率そのものではありません。前任者が何年在籍したか、入社1年目の評価指標が何かを聞くほうが、実態に近い情報が得られます。

まとめ

新規営業がきついと言われる理由は、断られる前提の活動量、成果がゼロになりうる期間、リストの質が結果を先に決める構造、関係をゼロから作り直す立場の4つに整理できます。いずれも性格ではなく仕事の設計から生まれる負荷です。

年収は職種名からは読めません。公的統計に新規営業という区分がないためで、参考になるのは企業規模別の水準です。令和7年の一般労働者の賃金は大企業38.51万円、中企業32.62万円、小企業30.56万円となっています(厚生労働省 企業規模別にみた賃金)。

きついと感じたら、辞めるかどうかを決める前に数字を工程で割ってください。接触件数、商談化率、受注率のどこが落ちているかで打ち手は変わります。改善しない場合は、リストの供給を分業している会社を探す選択肢があります。

新規営業には、特定商取引法、特定電子メール法、個人情報保護法という3つの制約が関わります。会社が法令対応をどう運用しているかは、入社前に確認しておきたい項目です。

接点をゼロから作った経験は、商材が変わっても持ち運べます。転職の場面で語るべきは受注件数ではなく、誰にどう当たるかを決めた判断の中身です。

株式会社CAREER FOCUS/東田尚起

新規営業を続けるか離れるかを迷っている方は、まず今の会社で自分が抱えている工程の数を数えてみてください。職種を変えなくても、体制を変えるだけで解決する悩みは少なくありません。

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